私「サインコサイン」の味方です

少し前に、某県の某人物が、ある会見で

「女性にサインコサインを教えて何になるのか」

という話をして物議をかもしました。

その発言者は、釈明として
次のようなことを述べています。

そもそもサインコサインタンジェント、
皆さん、sin(α+β)とかcos(α+β)とか、
高校時代に習ったと思うけれど
あの公式を覚えていますか。

私もサインコサインというのは
人生で1回使いました。

「私の足がもし15cm長ければ、
私はボルトぐらいのスピードで
100mを走れます。」

ということで、私の足が15㎝長くして、
一歩一歩、凄い回転が早ですからね。
そのときぐらいしか
サインコサイン使っていないよね、と。

サインコサインってのは何に使うのかね、
ってのが従来からあって、
昨日はたまたまそれと女性を結びつけて、
口が滑った形でしゃべった、
というのが本当のとこですね。
だから女性蔑視とかなんとか
という話ではなくて、
どうしてあの記事なのかわからないけれども、
あのー、その程度の話なんですよね。

サイン、cos(α+β)とか、
まあまあ教えなきゃいけないんだけど、
サインコサインとかそれからログとか。

まあ数学を専門にする
理科系の人は違いますよ。
だから、あのいろんなカリキュラムの中で
一体何を教えるのかね、
というのは結構難しいよね、
というのがセンテンスです。
(8月28日定例会見の内容を
動画サイトから引用)


さて、私は、この会見と、
その後の報道やWEB上での反応を見て
とても気になったのは、
話し手受け手の両者に、
「サインコサイン覚えて何になる」
といった数学に対する
ネガティブ性みたいなコンセンサスが
出来上がっているということでした。

「そりゃあもちろん、サインコサインなんて
さっぱりわからないし、
実生活に役に立ったことなんかないけれど、
でも女性差別はいけないよね」

というような。

なので、私は、この会見を行った方の
言動を糾弾するのではなく、

数学教育が現実問題と乖離し、
問題を解く技能をひたすら教え込んでいる
という数学教育に横たわる
問題を指摘したいのです。

なぜなら、これは、
発言者の問題というより、
そのような貧しい学びを
植え付けてしまうような、
数学教育を行ってきた、
我々教師の責任でもあると思うからです。

そして、この発言者の方が
東大法学部卒であるという事実を思うと、
ますます事態は深刻です。

そういう受験競争の勝利者であり、
国際社会の中で
日本を動かしていく立場の人物が、
そのような貧しい数学観を
持っていることに
危惧を抱くのは私だけでしょうか。

更にいうと、このブログの前回の記事で、
現実問題との関わりを主張する、
PISAの「数学化サイクル」の話をしたのですが、
そんなキレイごとは糞くらえ、
東大に入るためには、
ひたすら問題を解く技術を鍛えればいい。
意味なんかわからなくても、
どうせ、大学に入ってしまえば
もう使わないのだから。

などといった、「本音」が、
今まさに進展しようとしている
教授パラダイムから
学習パラダイムへという、
アクティブラーニングのムーヴメントを
かき消してしまうことにも
なりかねないとも思うのです。


さて、ここから、数学教師の立場で、
サインコサインについて、
その有用性などについて語りたいと思います。

私は、三角比、三角関数ほど
日常生活に取り入れられ
役に立っているものはないといっても
過言ではないと思っています。

例えば、測量技術は三角関数なしに
語ることができません。
航海や航空学、建築学、天文学等々、
あらゆる測地、運行、建造、照準などに
三角比が使われていることは常識です。

以前、ブログにあげた、
大野高校の生徒の思い出に関する
動画を再度アップしておきます。

自分は大工になるから
数学なんか勉強してもしょうがない、
といっていたK君が、
大工になってタンジェントを
自分のものにしているという内容です。




そして、三角関数は、
「円運動を記述する言語」
という一面もあります。


円運動する物体の、位置、速度、加速度は
角速度と動径を用いて、
サインコサインで与えられます。

あの発言者の
「ウサイン・ボルトの足の長さと速さ」の話は、
実は円運動の話題だったわけです。

三角関数の加法定理は忘れても、
このようなトピックスは頭に残っているんですね。

ということは、そういう現実面での応用や
面白さを授業の中に取り入れることで、
その後の人生が豊かになっていく、
ということがいえるのではないでしょうか。

更に円運動から応用すると、
すべての周期的な現象は
三角関数で記述できるということにもなります。

すると三角関数の応用は相当広くなります。
例えば、周波数は三角関数で表されるので、
様々な音源を解析したり、
作ったりすることができるわけですね。

私が以前の勤務校で、
難関大進学希望者向けの授業の中で
次の様な問題を扱いました。

横国フーリエLT

これは、フーリエ級数の入り口の入り口
とも言える問題です。
「y=xという直線の方程式を
(-πからπの区間内で)
三角関数で最良の近似をしよう」
というのがこの問題の主張です。

この時、私はフーリエ級数について
少し時間をとって話をしました。

任意の関数を多項式で近似する
というのがテーラー級数ならば、
手書きも含めたあらゆるグラフを
三角関数で近似するのがフーリエ級数。

その応用がフーリエ変換であり、
20世紀後半に開発された
高速フーリエ変換(FFT)が
画像処理に革命をもたらした
というカンジの内容でした。

もちろん、私も自信がないので
深入りはできませんでしたが、
それでも受験間近の3年生達が、
それはとても興味深く聞いてくれました。

その後、ある生徒がプリントの隅に、
下のような「しもまっち」のイラストを
描いていたのが印象的でした。

CTスキャンLT


CTスキャンの原理を話したことが
印象に残っていたようです。

因みに、これを描いた生徒は、
大学の数学科に進んでいます。

最後に、少し怪しい話題ですが、
三角関数とバイオリズムの話を
取り上げたいと思います。

下の写真は、私が花巻北高校で
バスケットの顧問をしていたときに、
選手に配った部活の練習日程表です。

バスケバイオリズム

2月から4月の地区予選に向けた
メニューが書かれています。
これに、選手一人一人の
バイオリズムを付け加えて配布します。

バイオリズムとは、
人間には生まれながら、
身体(P)、感情(S)、知性(I)の
3つの波を持っていると主張する
一つの疑似科学です。

ちなみに身体は23日、感情は28日、
知性は33日の周期をもつ
と言われています。

すると、これは周期的現象なので、
三角関数で表現できます。

それを、1か月スパンで表して
生徒に配ることで、自分の高調期と低調期を
予測することができたり、
あるいは、生徒どうしの位相のずれから
「相性率」を算出させたりします。

これは、互いのコミュニケーションにもなるし、
三角関数の周期の勉強にもなるので、
いい教材ではないかと思います
(バイオリズムの妥当性はさておきですが)。

私は、演習問題の裏に、
生徒全員の誕生日のバイオリズムを
それぞれ印刷したものを、ランダムに配って、
問題を解き終わった後に、
その誕生日の生徒をクラス内で探して
自分の答案の採点者になってもらう
という試みを時々行います。

一人一人違うプリントを作るので大変ですが、
クラスの雰囲気を盛り上げることにも
役に立ち、とてもいいですよ。

そのバイオリズムの授業に関する記事と、
バイオリズム作成ソフトの
ダウンロードは下記からどうぞ。

「バイオリズム」

以上、長くなりましたが、
私のサインコサインへの熱き思い、
伝わりましたでしょうか。



 

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