トランジッション

昨日より就職選考が始まりました。
私も就職試験に向かう生徒に
面接練習を行っていて、
昨日全員終了しました。

面接練習とはいっても、
高々1人10分程度ですので、
雑談程度なんですけれどね。

でも、こちらが対話をしようという
スタンスで臨んでも、
生徒は、どうしても「練習通り」
という観念にとらわれていて、
ステレオタイプの一方的な反応に
出会うことも多いですね。

そうなると、彼らに
一体どんな個性があるのか、
その輪郭さえも掴むことができません。

私は、久しぶりに
就職試験の面接を経験しながら、
8月に本校を訪問された
京都精華大学の筒井洋一先生の
話を思い出しました。

筒井先生は、こちらが興味のありそうな話題を
当意即妙にふられます。
その問いかけに反応し、
なるほどと考えを巡らせているうちに
いろいろな気づきが得られます。
あたかも自分が一人で思いついた
気にさせるところが、コーチングのなせる技。

自分は、未だに自分が気持ちよくなるように
語ってしまうことが多いので、
筒井先生を見習いたいですね。

さて、その筒井先生の話です。

彼の友人で、量刑の重い受刑者が
仮釈放される際に、
彼らを、社会に送り出すため
支援を行うカウンセラーがいるとのこと。

刑務所から社会へ出ることは、
相当なできごとであり、
心身に大きなプレッシャーが襲いかかるので、
このような職業は必要なのですね。

筒井先生曰く、
そこで行われるカウンセリングは、
受刑者に、いい思い出などを想起させ、
記述させ、言語などによって表現させる
という過程で行われるということです。

つまり、それは、まさに
アクティブ・ラーニング型授業の
手法そのものであるとのことです。

そういえば、以前、処遇カウンセラーと呼ばれる、
刑務所における心理カウンセラーの方が、
薬物依存者に対して、
雑誌の切り抜きを使うコラージュ療法などの
認知行動療法をグループワークの中に
取り入れているという話を聞いたことがありました。


私は筒井先生とそんな話しをしていて、
構造的に学校も同じではないかと膝を打ちました。

話はすこしそれますが、
以前、筑波大学の五十嵐先生と院生の方々が
本校に訪問されて哲学カフェを行ったとき、
五十嵐先生が、ミッシェルフーコーがいうところの、
「監獄、学校、病院」の共通性とは何か
という問を立てられました。

生徒からは、どれも「監視されている」場所である
という発言が出ました。

対話の中で提示された一つの解は、
三者とも、強制的に権力に従わせるのではなく、
教育、訓練によって、規則に適応的(従順)で
生産性のある人間に作り変える
システムであるというものでした。


で、話を戻しますと、
私が、筒井先生の話を聞いて、今思うのは、
監獄も学校も病院も、
いつかはそこから社会に出ていく
場であるという共通性です。

つまり、三者とも、
そこに居続けることが目的ではなく、
いずれ、違う(本来の)場所に移行するための
準備の場であるということです。

そのように考えれば、そこで行われる教育は、
社会で逞しく、しなやかに、他者と共に
どう生きていくことができるか、
つまりトランジッション(移行)を視野に入れた
「学び」「支援」を行うことが当然になるわけです。

極論すると、そこを目指さずして、
監獄・学校・病院は存在する意味がないともいえます。

刑務所からシャバに出るときに、
「社会に出るとはこういうことだ」という講義を
一方的に注入したとて、
服役者がそれを自分ごとと捉えなければ、
真にそこで役立つ力にはならないでしょう。

それは、就職試験、面接応答があるから
それに対処する仕方を教え込むだけでは、
生徒の生きる力は育まれないのと同じです。

溝上慎一先生は、トランジッション(移行期)を
視野に入れた学習は、
総合学習やホームルームや学校行事
などで賄うのではなく、
すべての授業で行う必要があることを
力説しています。

私も同感です。

生きる力を含めたキャリア教育は、
形だけのインターンシップや、
総合的な学習や、ホームルームなどでの
「プラクティカルな訓練」によって
形成されるようなものではなく、
すべての授業の中で行われてこそ、
骨太の力となり、
社会的なマインドが形成されるはずだと思います。

そして、授業がトランジッションを目指して
行われたとき、
そのスタイルはALにならざるを得ないし、
同時に、教師のマインドセットも
整うのではないかとも思うのです。

そのような中でこそ、学校は、
フーコーの言う、
規則や権威に従順な生徒を再生産する場から
転換していくことができるのではないか。

そんな大それたことを、
刑務所の話を聞きながら、
一人得心したのでした。


 

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