発信力より受信力というコンピテンシー

盛岡三高時代、生徒につけさせたい力として
「発信力」「傾聴力」「協働型問題解決能力」
ということをよく言ってきましたが、
最近私は、「受信力」の大切さを
強く感じるようになりました。

例えば、先日、大野高校吹奏楽部が
様々な方から支援をいただきました。
プロの音楽家からクリニックしていただいたり、
昨日は、個人の方から
支援金をいただきました。
それが実現したのは、私がブログや、
フェイスブックで発信したことや、
それを基にした新聞記事がきっかけです。

でも、いくら発信したところで、
それを受け止めてくれる人がいなければ、
このような形にはなりません。

私は、「受信力」というコンピテンスは、
発信力の上位にあるもの
ではないかと思います。

そして、発信する人間は、
受信者へのリスペクトを持つことと、
発信者自身が受信力を
磨くことが必要だと思います。

私は、かつて若気の至りで、
2度ほど数学の国際学会で
発表したことがあります。
1992年には、カナダのケベックに
2週間以上滞在し、
ポスタープレゼンテーションと、
分科会で発表し、
更に、地元のラバル大学の学生にも
レクチャする機会を得ました。

当時、フラクタル数学の、
誰も研究したことがないもの
(と、そのとき自分は勝手にそう思っていた)
を発表するということで、
かなり意気込んでいました。

周到に英語のレポートを準備していましたが、
結局、自分は、自分のことを
一方的に発表するだけでした。
そこにいる聴衆の反応はお構いなしに。

今思うと本当に恥ずかしい限りですが、
英語圏の人の質問はほとんど
シャットアウトして、とにかく
「自分を見て」「自分の話を聞いて」だけ。

私は「発信」こそがすべてで、
双方向の対話など
微塵も考えていなかったのです。

受信力とは、
語学力+コミュニケーション力+
テクノロジーを使いこなす力、
であるとともに、
異質な他者を認める力
も含まれていると思います。

前振りがとても長くなりました。

なぜ、こんなことを書いたかというと、
実は今日、「反転授業の研究」グループ主宰の
田原真人さんから
ウェブ上でのインタビューを受け、
彼から受信力の強さを感じたからです。

私は、ネットでのインタビューは初の経験で、
なかなか当意即妙な応答ができず、
田原さんには申し訳なかったのですが、
彼は、非常に上手に聞き役に回り、
会話をスイングさせてくれました。



そんな、田原さんを見て、
受信力とキーコンピテンシーとの
関係について
なぜか思いめぐらせてしまいました。

OECDのDeSeCo計画
(Definition and Selection of 
Competencies Project)が
2003年に発したキーコンピテンシーという概念が、
日本に伝えられたとき、
殆どの人がチンプンカンプンだったと思います。

だって、文部科学省の定義はこんなですよ。

「コンピテンシー(能力)」とは、
単なる知識や技能だけではなく、
技能や態度を含む様々な
心理的・社会的なリソースを活用して、
特定の文脈の中で複雑な要求(課題)
に対応することができる力。

「キー・コンピテンシー」とは、
日常生活のあらゆる場面で
必要なコンピテンシーを
すべて列挙するのではなく、
コンピテンシーの中で、特に、
人生の成功や社会の発展にとって有益、
さまざまな文脈の中でも重要な要求(課題)
に対応するために必要、
特定の専門家ではなく
すべての個人にとって重要、
といった性質を持つとして選択されたもの。
個人の能力開発に十分な投資を行うことが
社会経済の持続可能な発展と
世界的な生活水準の向上にとって
唯一の戦略。
(以上文部科学省のHPより抜粋)


だって。わかりますか。

当時、私は、キーコンピテンシーを
次のように解釈し、説明していました。

まず、個人の能力は、

① 社会に成果をもたらすこと
② 人生において成功する(質の高い人生を送る)こと

という、個人と社会の両者にとって
価値や効果をもたらすものという
前提に立っているということです。

そして、キー・コンピテンシーは、
次の3つに集約されます。

①道具を相互作用的に用いる能力
A)言語・シンボル・テクストを相互作用的に用いる
B)知識や情報を相互作用的に用いる
C)テクノロジーを相互作用的に用いる

②異質な人々からなる集団で互いに関わりあう能力
A)他人といい関係を作る
B)協力する
C)争いを処理し解決する

③自律的に行動する
A)大きな展望の中で行動する
B)人生計画や個人的プロジェクトを設計し実行する
C)自分の権利、利害、限界、ニーズを守り主張する

キーワードは「道具」「他者」「自分」との関わりです。
更に、この三者の中核に
省察性(reflectivity:社会空間を乗り切る力、
矛盾や差異に二者択一を越えて対処する力、
責任を持つこと)という概念を置き、
3つのコンピテンシーを相互関連させながら、
自らの人生をナビゲートしていく
ということがコンピテンスの概念です。

ちなみに、PISA調査は、
キーコンピテンシーの①についての
能力を評価するものといえますね。

田原さんが「反転学習の研究」の中で
様々な仕掛けを行い、ネットワーク、
リレーションを築いていくのは、
彼のキーコンピテンシーの高さ故だと感じました。



そう。

反転のグループで知り合った人たちは、
キーコンピテンシーの高い人ばかりです。
ICTを使い、国際的なリソースを持ち、
他者といい関係をつくり、
プロジェクトを企画し遂行する。

こんな人たちが、
きっとこれからもっと多くなるのでしょう。

私は、まず確実に①のテクノロジーの部分と
語学力のリテラシーが致命的ですね。

田原さんや江藤さん達が、FBの発信を
あれだけしながらも、いろんな人の発信を
きちんと咀嚼し、瞬時にコメントするのを見て、
基本となる①のスペックが圧倒的に違うなあ
などと思ったりします。
(私はとりあえず「いいね!」ですから)

まずは、田原さん達と交わりながら、
自分の足りない部分を
補っていこうと思う今日この頃です。


田原さんありがとうございました。


 

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