三宅なほみ先生

東京大学大学院教育学研究科教授で、
認知科学、認知心理学、教育工学の
第一人者である三宅なほみ先生が逝去されました。

癌と闘っておられたことは承知していましたが、
まさかの訃報に驚き声が出ませんでした。

私は、初任の頃(1980年代)に、
三宅先生が書かれた
「教室にマイコンを持ち込む前に」という本を読んで、
PCを用いた授業に対する心構えができました。

私の教師としての方向性を作ってくれた大きな一冊です。

また、人工知能系言語LISPを母体とした
LOGOという再帰的プログラミング言語による
教材開発も三宅先生からヒントをいただきました。

また、2002年から雑誌「数学教室」に
長期にわたって三宅先生が書かれた
学習科学についての連載を読むと、
現在何かと話題の「アクティブラーニング」や、
「授業から学習へのパラダイムシフト」の話など、
まさに先生が、その先駆者の一人
であることがわかります。


三宅先生は、中京大学から東京大学に移られてから、
CoREF(Consortium for Renovating Education of the Future:
大学発教育支援コンソーシアム推進機構)の
副機構長として、学習科学の視点から
学校教育に協調的なプロセスを引き起こすような
知識構成型授業を精力的に提案、
発信されておりました。

私が2012年に、教育委員会に勤務していた時、
埼玉県が東大とインテル社と提携して行っている
協調学習の取組みを聞く機会がありました。

私は、その話を聞いた後、
「是非岩手県にジグソー法を持って来よう!」と思い立ち、
早速、三宅先生と、浦和高校の野崎亮太先生に
連絡を取りました。

そして、2013年の9月に、盛岡三高で
県内80人もの数学教師の参加のもと、
お二人の先生を招いて、
協調学習についてのワークショップを実施しました。

これをきっかに、岩手県の数学科の多くの教師が
ジグソー法の実践をするようになり、
現在に至っています。

最近、三宅先生が監訳された
「21世紀型スキル」という本を読んでいますが、
今年の12月にお会いして、そのことについて
お話を伺うことを楽しみにしていました。

残念でなりません。
謹んでご冥福をお祈りいたします。



ところで、
もう今から30年近く前ですが、
三宅先生が「数学セミナー」の
TEA TIMEに書かれていた、
引算の話が印象に残っています。

最後に、その記事を紹介したいと思います。

巷の一般人は、数学、どころか算数、どころか計算、
いや数学を見るのもいや、という人が少なくないという。
ところが、心理学者からみると、
一般の人はそれぞれの目的に合せて
とても上手に数を扱っているようにも見える。
<中略>
最近私もひとつ面白い観察をした。
渋谷駅から勤め先にゆく途中にちょっと感じの良い
コーヒー店ができて、ときどき立ち寄る。

この間もそこのカウンター席でのんびりコーヒーを
飲んでいたら、
マスターが自家製のチーズケーキを作りだした。

ミキサーにクリームチーズやらミルクやらを
定量ずつ計って入れてゆくのだが、
その計り方が私には新鮮だった。

普通私たちが家でケーキを焼くようなときには、
粉やらバターやらを計るために別の容器を用意して、
それを秤にのせ、その中に粉やら、
バターやらを入れて計るわけだが、
こうするとその容器に粉やらバターやらがくっついて、
不経済である。しかも、後で洗う物も増える。

コーヒー店のマスターはそんな無駄なことはしない。

クリームチーズを計るなら、
まず残っているクリームチーズをその入物ごと
全部秤にのせる。

そしてそこから必要量だけ、
メモリの上では引き算をしながら取り分けて、
直接ミキサーの中に放り込んでしまう。

ミルクもそうである。カートンごと秤にのせて、
ミキサーの中に少し注ぎ込んではまた計って、
ちょうど必要量だけ軽くなったところで止める。

「なあに。単なる手抜きですよ」
とマスターは事もなげに言ったが、
私はちょっとした引算の能力が、
皿一枚でも余分には洗わないという
プロ根性に支えられて、
こんなところで省エネの役に立っている!と、
いたく感心した。

(数学セミナー1986年7月号より抜粋)
 

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