クリティカルに考える

先日、2年生への数学の講演の中で、
「クリティカルに考えるとは」、
というテーマで、いくつかの話をしました。

ここでいうクリティカルとは
「批判的に」という意味合いではなく、
「見かけに惑わされず、本質を見抜こう」
という思いを込めました。

いくつか紹介したいと思います。

<その①>
「黄金比は本当に自然界に潜むのか」


黄金比(1+√5)/2 は建造物や自然界、
更には人間の顔にまでも潜んでいる、
などという人もいます。

では、私の顔でやってみましょう
(授業では学年長の顔を使いました)。

黄金比しもまっち①L

顎から口と鼻、顎から鼻と目
までの比が見事黄金比になっている!

こんなことを言って、
どうだ数学は凄いだろう、
といいたいところですが・・・

ここで、黄金比(1+√5)/2≒1.6 
ではなく、
π/2で同じことをしてみましょう。

黄金比しもまっち②L

黄金比と同じような結果になります。

ならば、むしろ、黄金比より
π/2にした方が説得力があるかも。

「人間の顔にはπが潜んでいる。
それは、人間の頭が球体だった名残である」

なんつって。

黄金比で成り立ったからと言って、
逆に、人間の眼鼻のバランスは
黄金比によって決定される
などという因果関係は示されないのです。

<その②>
「ピラミッドは本当に不思議なのか」


この話は、大分以前に記事に書きました。
そちらで・・・
http://simomath.blog.fc2.com/blog-entry-232.html

<その③>
「年間の盗難件数の推移」


PISA2006年の問題から。

PISA2006L.jpg

このグラフを見て、
1998年から1999年にかけて、
盗難件数が激増しているかを論じる問題。

グラフのインパクトから、
「激増した!」という印象を持ちがちですね。

クリティカルシンキングとは、
先入観や思い込みなどの
認知的バイアスを自覚した上で、
科学的・論理的に考えて
判断を下すということです。

そこで、冷静にグラフを見てみましょう。

これは、ベースラインが505になっている
所謂「足きり」といわれる、
非常に問題のあるグラフです。
ベースを0にすると、
見た目のインパクトで
騙されることはありませんね。

講演では、三高生レベルの解答として
次のような少し難しい話をしました。
データの件数は1024個
これを、ランダムに1998と1999に
振り分けるということを行うとします。

すると、確率1/2でそれぞれに
振り分けられるので、平均は512です。

しかし、いつでもピッタリ512に
なることはなく、幾分ズレが生じます。

でも、例えば、100と924などと
大きく偏るなんてことはまず起こり得ません。
必ず、平均の近くにばらつくはずです。
では、どの程度の範囲に
平均からのばらつきが生じると
考えればいいのでしょうか。

これは、標準偏差という
数学の手法によって
調べることができます。

この場合は、確率1/2の
二項分布に従うので、
標準偏差は
√1024×0.5×0.5=16となります。

これが標準誤差、つまり平均512の±16
のところにデータが落ち着くことが標準、
ということです。

二項分布の正規分布近似という考え方で
大雑把にいうと、
1万回このような実験を行った時、
約7000回は512±16の範囲に入るだろう、
9500回は512±32回の範囲に入るだろう
とも推論できます。

なので、問題にあるデータは、
標準誤差の範囲内なので、
特に何らかの変化があった、
というわけではなく、
想定の範囲内ということになりますね。

その他、いろいろな話をしましたが、
また機会があれば記したいと思います。


 

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