今回は、三角関数の問題について
取り上げてみたいと思います。
私が2年前、
初任者研修の講座を担当していた時、
初任者に次の問題を
解いてもらったことがあります。
sin3θ=cos2θ を満たすθを求めよ
ただし、0°≦θ≦30°とする。すると、案の定、初任者10人が全員、
次のように解いたのです。
<初任者の答案>

一番よくできていた人で、
上のような答案でした。
感心したのは、
皆さん三倍角の公式は
しっかり覚えているんですね・・・(笑)
さて、この問題における私の意図は、
弧度法を使っていないことからもわかるように、
そんな三角関数の公式による
代数計算ではなく、
三角比として図形的にこの問題を眺める
ということです。
<私の期待していた解答>

公式にあてはめていくような
代数計算手法は、
いわば意味を捨てて
「手の運動」だけで解く世界です。
それは一つの数学の良さ
であるかもしれません。
しかし、数学教師として、
意味や概念をないがしろにし、
解法パターンだけ
頭に入れればよいというのは、
受験生に勉強を教える
学生アルバイトと何ら変わりません。
では、先ほどの問題を
次のように三角関数の問題にして、
私の解答を示します。
sin3θ=cos2θ を満たすθを求めよ<私の解答>

上のタイプの問題は、
ここ数年センター試験に
しつこく登場しています。
単位円で三角比をとらえていれば
何てことのない問題です。
しかし、特に岩手県では、
この手の問題は
相当にできが悪いのが現実です。
私は、多くの学校で
数学教員の授業を参観しましたが、
数学Ⅰの鈍角の三角比を定義する場面で、
①「直角三角形の辺の比から
定義された三角比が」
②「単位円上の座標と
同一視できることを確認し」
③「その定義に従えば
自然に鈍角の三角比を定義できる」
という「まっとうな」方向で再定義する
教師が少ないことに愕然としました。
ひどいのは、下図のような
「sct法(と私は呼んでいる)」を、
鈍角はおろか、
三角関数にまで刷り込んでいく
指導をしている教師も見かけます。

つまり、すべて、
上の構図をあてはめることと、
特殊角(有名角)の三角比だけ
覚えれば問題は解けるというのです。
これでは、円運動と
三角関数の関係どころか、
三角関数の概念や
意味が伝わるとはとうてい思えません。
「sct法+特殊角の三角比+一連の公式」
という態度で三角関数を教える教師は
数学=試験に出る問題だけ
解ければよいと思っているような気がします。
だからこそ、センター試験にはしつこく
sin△=sin▼
cos●=cos◎
sin■=cos★
というタイプの方程式が
出題され、sct法で呪縛された
生徒達はいつまでも
同じ過ちを繰り返すのでしょう。
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