もうセンター試験まであと僅かですね。
これから時々、センター試験ネタも
書いていきたいと思います。
今回は、一昨年度の数学ⅡBの
指数方程式の問題を
取り上げてみたいと思います。


3元連立の指数方程式を、
3次方程式の解と係数の関係を
経由して求めていく問題。
何とも高度な手法ですね。
しかし、結論を見ると、
x,y,z は整数になっているので、
上の問題文の■の方程式を満たす解は
簡単に類推できます!
もっといえば、問題文の★を良く見ると
X=1/2 が
与えられているではありませんか!!
これで、x=-1 がわかり、■部分は
2^y+2^z=17 となるので、
y=0 z=4 が瞬時に、
しかもユニークに決定します。
これから逆にたどれば、この問題は
すべてたちどころに解決されます。
(私は1分で解答を終えました)
まるで、推理小説で、
有能な探偵が状況証拠から
論理を組み立てて
犯人を特定しようとしている時に、
犯人がいきなり自供してしまった
ようなものですね。
計算機科学などで使われる用語に、
ヒューリスティックス(heuristic)
といわれるものがあります。
これは、演繹的に推論する方向でなく、
少ない努力で解を求める方法、
あるいは、
経験や直観による発見的な思考法
といった意味を持ちます。
ここで述べた手法もいわば
ヒューリスティックス的
なものと言えるでしょう。
数学とは論理のステップを正しく追って、
基本を積み上げていくことであるとすれば、
このような解き方は
思いっ切り邪道であるでしょう。
しかし、問題解決とは、
第一原理から論理の連鎖によって
導くことでは必ずしもありません。
そのように捉えてしまうことは、
むしろ数学の勉強を
つまらないものにしているということも
いえるのではないかと思います。
大学の解析学でε-δ論法という
証明法を学びます。
これは、結論の式を先に作って、
そこから前提に結びつけていくように
辻褄を合せる記述を行うことから、
俗に「刑事コロンボ型証明法」
と呼ばれます(最近の方は「刑事コロンボ」を
知らない人が多いので、「相棒」とかを
例に出した方がいいかもしれませんが)。
このような刑事もののドラマが人気なのは、
状況証拠から理詰めで論理的に
犯人を絞るのではなく、
最初に視聴者に犯人を提示し
(または主人公が類推し)、
状況証拠とすりあわせていくことに
面白さがあるからではないかと思います。
既に亡くなられましたが、
京都大学名誉教授であった森毅氏は
「メタプロブレムがわかる生徒は
プロブレムがわかる」
ということを述べています。
それは、問題の背景を知る、
作題者の意図を考える、
答えから出発して逆から考えてみるなど、
問題を楽しむ気持ちが、問題を俯瞰する力を
生みだすということなのでしょう。
今回の問題を生徒に解説する際には、
指数対数と高次方程式の問題として
扱うだけでなく、
記述の構造にも着目させ、
単元の内容の理解とともに、
問題解決に向かう思考力も
あわせて鍛えたいところです。
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