数学は答えがひとつ?

数学は答えが一つだと教えられます。
では、次のような問題はどうでしょう。
道順とビー玉

これは、2年前に、北海道で行われた
数学の全国大会で私が講座を担当した時に、
参加された先生方に出した問題です。

②の問題では、2人が2個ずつ持つのは、
図の様に、分け方が5パターンある中の
1通りなので、確率は1/5と考えることができますね。
確率ビー玉1

しかし、もし、どちらが持つかを1個ずつ、
2人がじゃんけんなどをしながら決めていくとしたら、
2個ずつ持つ確率は3/8とも考えることができます。
確率ビー玉2

どちらも答えとしてはありです。

前者は、持ち方のパターンが一様分布に従うと
考えた場合の確率。
後者は、二項分布を仮定した場合の確率です。
(実際、会場の40人程の参加者にやってもらった
ところ3/8に近かった)

③の道順の問題は、
3通りの道順の選び方が同様に確からしい
(一様分布)と考えれば1/3です
確率道順1

しかし、各分岐点で、一方の道を選ぶ確率が
同様に確からしい(二項分布)とすれば
ACDBの道順を進む確率は1/4と見ることもできます。
確率道順2
確率道順3
確率道順4


数学では、現実世界の問題を解決するために、
標本空間をどうとるか、何が独立か、
どれが同様に確からしいかなどの前提の下で
確率を考えます。
しかし、だからといって、
それが現実世界を適切に表しているかどうかは、
実験などによって分析するしかありません。

ですから、現実問題の解決に関して、
数学が出した答えだからと言って、
それを頭から信用することはとても危険なのです。

先日、日本評論社から出版されている、
日本数学協会の機関紙である「数学文化」に
小林道正先生(中央大学名誉教授)の、
地震の発生確率算出について
興味深い文章がありました。
数学文化

それによると、政府の機関である
地震調査研究推進本部が発信している
東海地震の起きる確率の計算は、
1498年、1609年、1707年、1854年の
過去の4つの大地震データ(間隔は3つ)と、
「間隔の分布がBPT(Brownian Passage Time)分布」
と呼ばれる分布に従うという仮定により
「無理やり」算出されたものであるとのことです。
BRT分布を用いる理由として次の様に記されています。

「BPT分布というのは、一定の速度で増加していく部分と、
ブラウン運動というランダムな分布とを加え、
その値が一定の境界値を取る時刻の分布表している。
このような分布を仮定することをよしとしているのは、
地震はエネルギーがたまってある臨界値になると
地震が起きるというイメージと合致しているように
見えるという理由だけである。この分布には
あるパラメータαという値が必要なのであるが、
このパラメータの値の定め方で、
地震の発生率もかなり異なってくる」


小林先生は、最後に次の言葉で結んでいます。

科学的な装いを施した「確率」の数値など
何の意味ももたないように思われる。
そもそも確率とは、きわめて多数回の試行で
初めて意味を持つ数値なのである。


私たちは、数学の衣を纏った怪しいロジックに
惑わされないためにこそ、
数学を学ぶ必要があるのかもしれません。

 

コメント

ちょうど昨日高1の授業でこの話をしたところです。同様に確からしいとはなんともトリッキーな表現ですね。この話も確率の初めに取り入れて見ます。
2014/ 06/ 01( 日) 06: 57: 57| URL| romy# -[ 編集 ]
 
romyさんコメントありがとうございます。
高校数学では、とりあえず「同様に確からしい」が呪文のように唱えられるわけですが、実際そうではない場合を体験してみることも必要ですね。そうすると「同様に確からしい」のありがたさがわかるかも。ところで「同様に確からしい」の否定はどう表現すべきでしょうかね。「同様に確からしいとは言えない」かなあ。
2014/ 06/ 01( 日) 16: 42: 07| URL| しもまっち# -[ 編集 ]
 

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