神々の指紋

昔、「神々の指紋(グラハム・ハンコック)」という本が、
数学的にも面白いといわれ、読んだことがありました。

上巻の23章に、円周率の話がでてきます。
そこには、こんなことが書かれています。

定説によれば、紀元前3世紀に、
アルキメデスが人類で初めて、円周率を3.14と
正しく算出したことになっている。
学者たちは、ヨーロッパ人が到達した16世紀
よりも前に、新大陸の数学者たちがπに近い
数字を得ているはずはないという。
ところが、ギザの大ピラミッド(アルキメデスが
生まれる2000年以上前に建てられた)も
テオティワカンの太陽のピラミッド(スペイン人
到来の時期よりも途方もなく古い)も
πの数値を使用して設計された事実が
発見されて混乱を起こしている。
この両方の建造物は、似たようなやり方で
πを使用しており、大西洋を隔てて存在した
太古の建設者たちは、いずれもこの卓越した
数字πに詳しかったようだ。
ピラミッドの幾何学的な主要要素は、いずれの場合も
(1)地上から頂上までの高さ、と
(2)地上における建造物周辺の長さ だ。
大ピラミッドの場合、オリジナルの高さ(146.7m)と
周辺の長さ(921.44m)の比率は、
円の半径と円周の比率と同じになる。
つまり2πなのだ。(中略)
このような数学的に精密な相互関係が偶然生まれる
とはとても思えない。
したがって大ピラミッドの建設者たちはπについて
大変詳しく、意識的にこの数値を建造物の寸法に
使用したに違いない。


ここまで読んで、私はドッとこけてしまった。
そして大笑いしてしまいました。
そして、続きを読むことをやめました。

だって、この話は、例えるとこんなことなのです。

3歳の子どもが次のような図を描いた。
神々の指紋

周囲の長さを調べると23.40cm、
一方線分の長さを調べると、7.45cm
この比率をしらべると3.14、πである。
つまり、この子は3歳でありながら
πを使用してこの図を描いたのである!


単にこの子どもは、マルを描けるようになった
だけです。

通常、地上で直線を引くときは、
縄などを使うのでしょうが、
その縄に目盛りを入れて巻尺にするよりも、
車輪(コロ?)を作って、
車輪の回転数を距離と見て、
ある長さを決めていくのが自然な発想です。

cyc.gif
サイクロイドのgifアニメ(GRAPESの画像を用いました)
円周の長さが直線の長さに対応しています。


例えば、半径Rの車輪を10回転させた分の長さを
1辺とした正方形を作ります。
すると、周囲の長さは、40×2πRです。

一方、高さは車輪で測ることはできないので、
例えば、高さがRのレンガを40個積み上げたとします。
これも自然な考えです。高さは40Rとなります。
すると、周の長さと、高さの比率には当然πが残り、
2πとなります。

これをもって、建造者はπを知っていたと
するのはあまりにもひどいですね。

グラハムハンコックは、ひっかけようとして、
こんなロジックを持ち出したのか、
または、本当にそう思っていたのか。
いずれにせよ、それを真に受けた人たちによって、
この本はバカ売れして、彼が億万長者になった
ことは事実でしょう。
(もちろん読み物としては
とても面白いのだろうけれど)

数学を学ぶことは、お釣りの計算、比率の計算など、
数字をいじって算数をすることではありません。
こんな変な論法にひっかからないように、
ロジカルに、クリティカルに物事を考える力を
つけるために学ぶのです。


数学の定理は「発明した」ではなく
「発見した」といわれます。

事実がそこにあることが、誰かによって
発見されるという捉え方です。

πは円を描けばいつでもそこに存在する事実です。
でもその存在は誰かによって「発見」され、
初めて数学になるということです。

私は、古代人が、πを知っていたことなんかより、
様々な工夫によって、大建造物を築いたという
知恵にこそ感服します。

私たちは、微積分やベクトルなど、
歴史の遺産のおかげで高度な数学を学んでいます。
でも、古代人が持っている知恵や工夫に及ぶものを
持っているのだろうかと思うことが多々あります。

 

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