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「情報」における課題①

1月17日に、朝日新聞から取材があり
「社会と情報」の授業参観と、
インタビューを受けました。

その記者は、現行の「情報」について
いくつかの問題意識を持っていて、
それを記事にまとめたいとのことでした。

なぜ、私に取材に来たのか聞いたところ、
上に対して忖度がなく、
本音の話を聞けそうだから、とのこと。

うーん。

これは褒められているのか。
確かに失うものは
何もない私ではありますが。

早速、昨日の朝刊に
その記事が載っていました。

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「先生が掛け持ち もう限界」
という見出しに、
ちょっとびっくりしました。

そして、「朝日新聞らしいなあ」
と苦笑いしました。

私は、取材の中で
「限界」という言葉を使ったのは、
これまで教育委員会が実施してきた
情報担当者の「資格化」のシステムが
限界を迎えているのではないか、
という文脈においてです。

でも、この見出しを見ると、
教員が掛け持ちで
情報を担当しているため、
「我慢も限界」とか
「疲労も限界」みたいなニュアンスで
とられがちですね。

まあ、そのような状況も
ないわけではないでしょうから、
あえて批判しようとは思いませんが。

ただ、この取材を通して伝えたかった、
「情報」に関しての私が抱く
問題意識について、
新聞の記事だけでは足りないので、
以下に少しまとめておきたいと思います。

私の問題意識は3つあります。

一つは担当者の問題。
もちろん資格化の
システムの問題も含みます。

二つ目は時代の変化に応じた
学習内容の問い直しについて。

三つ目は大学共通テストとの関わりです。

これらについて述べる前に、
昨年、大妻嵐山高校での研究会のために
作っていた資料に
追加分を加えたものをご紹介します。

今年度私が行った授業と、
かつて盛岡三高や
花巻北高校で行った授業の
トピックスをまとめてみたものです。

関心のある方はこちらからどうぞ→★★

50ページ近くになりますが。

では、まず担当者の問題について
私見を述べます。

岩手県では、数学、理科、家庭科など
他の教員免許を持つ教員に研修を行って、
情報の免許を与える形になっています。

ですので、大学で
情報の免許を取得した学生に対して
教員採用試験を実施するということは
これまで一度も行われていません。

このような形で、
情報の教員免許を付与された教員が
県内で200名ほどいるといわれています。

県内の学校数は70校に満たないので、
一見十分な数に見えますが、
実際はそのような単純な問題ではありません。

まず、第一に
教員免許を持っている教員の
高齢化の問題があります。

情報の免許研修が始まったのは
平成13年頃だったと思います。

最初に免許を取った教員が、
翌年の研修講師となり、
情報の教員が
再生産されていく仕組みでした。

このようにして数は確保されたものの、
現在はそれらの教員も高齢となり、
私の様に定年を迎える者も
どんどん増えていっている状況です。

そして、時代が変化する中で、
とりわけ「情報」は、
「昔取った杵柄」が
いつまでも通用する世界ではありません。
つねにトレンドを
追いかけていかなければならない
教科といえます。

そういう意味で、
情報をきちんと指導できる教員は
非常に数が限られているのが
実態ではないかと私は思います。

そして、第二に、免許取得者の
モチベーションの問題があります。

情報の免許を持つ教員は、
自ら進んで希望するのではなく、
上から命令されてやむなく取得した者が
殆どであると思います。

それはそうです。

よほどでない限り
自分の専門の教科を
ずっと指導していきたいと思うのは当然です。

私の経験を話します。

平成14年の盛岡三高時代、
数学科の中から
情報の免許研修を受ける者を
1人選出するようにと
県から通知されました。

もちろん、誰もやりたくありません。

皆数学の教員ですから、
当然数学を指導したいわけです。

ひとたび情報の免許を持つと、
数学を捨てて、
常に情報の教員として
生きていくことになるかもしれないのです。

つまり、教員キャリアの
ターニングポイントになるような、
それはとても大きな問題なのです。

盛岡三高では9人の数学科教員が集り
会議を行いました。

それは見事に誰もが一言も
言葉を発しない会議でした。

私はその沈黙にたまりかねて、
口火を切ってしまいました。

そうしたら結局、
私がやることになってしまいました。

その時、会議のメンバーの顔が
急にパアっと明るくなったことを
今でも鮮明に覚えています。

「協力するから」と皆さん言ってくれましたが、
後に「協力するという人ほど絶対に協力しない」
という定理が生まれることになります。

翌年、私は9クラスの情報の授業を
すべて受け持つことになり、
とても苦労しました。

恐らく、私の様に、
校内で指名されて
免許を「取らされた」教員も
多かったのではないかと思います。

では、現在の各学校の状況は
どうなっているでしょうか。

次のようなパターンが考えられます。

① 情報の免許取得者が担当する

県が想定するあるべきパターンでしょう。
ただ、大規模校だと1人では賄えないので、
TT型でやったり、
免許を持ってない教員を
免外申請して対応する形になるでしょう。

② 大学院生や大学の講師、民間人を活用する

私が副校長として盛岡三高に勤務していた時、
情報の免許を持った教諭が
3人以上いたのに、
実際に担当していたのは、
岩手県立大学の大学院生でした。
教員免許を持っていないので、
特別免許を申請して行っていました。

③ 複数の教科でローテーションを組んで
 免外申請して担当する


免許取得者がいない学校のパターンです。
例えば6クラスあれば、
英数国理社体から1名ずつ担当者を決めて、
1クラスずつまかなう、などといった
みんなで痛み分けするという考え方です。

④ 常勤講師、非常勤講師で対応する

私が花北に教諭として
勤務していたときは、
私が担当する他に、
定年退職した数学の先生を常勤講師として
専ら情報を担当していただいた
こともあります。
このように、常勤講師として
継続任用を希望する若い講師や、
退職者などに白羽の矢を立てる
というケースです。

いずれにせよ、
このような状況から透かして見えるのは
「情報はできるだけやりたくない」
という姿勢です。

だから「丸投げ」になったり、
あるいは、免外の教員でもできるように、
マニュアル化された教材を
前例踏襲型で行うスタイルから
抜けられなくなっている状況が
見られるのではないかと思います。

まずは、県が、
各学校でどのような対応をしているか
調査・把握し、その結果を
明らかにしていただきたいと思います。

だいぶ長くなってしまいました。
今回はここまでとしておきます。


 

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