「あなたとバスケと数学と」

先日、ある宴席で、
ふとしたことから
バスケットと数学の話しになりました。

三角形の内心と
バスケットボールのディフェンスについての
他愛のない内容なのですが、
子どものように一人めっちゃ熱中して
話してしまいました。

ニコニコと聞いて下さった皆様
ありがとうございます。

今から16年前になりますが、
ある雑誌にその話を書いたことがあります。

以下にその内容を記しておこうかと思います。

インラインの原則

「バスケットボールとはボールを
ゴールに入れるスポーツ」

非常に当たり前ですが、
これをバスケットボールの定義にします。

b-fig01.png

すると、この定義から、図1の様に、
オフェンスAがボールを持っているとき、
次の定理が導かれます。

【定理】
AはゴールGに向かってシュートする。
またはAはゴールGに向かって走り込む。

どちらも線分AG上での動きですね。
このことから、Aに対するディフェンスは、
線分AG上に立ちふさがるように
守らなければいけません。

これを、インラインの原則といいます。

従って、Aが図1のX方向にドリブルで進んでも、
ディフェンスはその動きに
構うことなんかありません。

b-fig02.png

また、図2のようにAが速攻でゴールに向かって
ドリブルしているときは、
その選手を追いかけるのではなく、
早くインラインのポイントに走り込むことが肝要です。

ヘルプサイドディフェンス

では、次にオフェンスとディフェンスを
1人ずつ増やして2対2の状況を考えましょう。

今、Aにボールがあるとします。
すると、「バスケットの定義」によって、
次の定理が得られます。

【定理】
① AがGに向かってシュートする
➁ AがGに向かって走り込む
③ AがBにパスをする
④ BがGに向かって走り込む

上で述べた4つの定理を見ると、
守るべき要点は、
線分AG,AB,BGであることがわかります。

つまり△ABGの3辺ですね。

今、ボールを持っているAに
ディフェンスaがついているとき、
Bに対するディフェンスbは
どの地点で守ればよいでしょう。

b-fig03.png

もし、図3のように、bがBに
ピッタリとくっついて守っている
(ディナイといいます)とすると、
定理の③④は防げますが、
②に対しては甘い防御になります。
(もしAがドリブルでaを抜いたとき、
カバーに行けません)

では、どうすれば3つの要点線分
AG,AB,BGを効率よく守ることができるでしょうか。

ここからが数学の話しになります。

△ABGの各辺に対して平等な位置は、
各辺から等距離となる三角形の内接円の中心、
すなわち内心になります。

b-fig04.png

よって、BのDFであるbは
三角形の内心の地点で
守るということになります(図4)。

これにより、例えばAがaを抜いて
Gに向かっていったならば、bはAを守るために、
AGのインラインに入ります。

また、AからBへのパスのラインは、
パスカットを狙いながら、
もし、Bにパスが入ったら、
bはすぐにBの前に出て、ディフェンスを行い、
今度はaが△ABGの内心の位置をとります。

このような守り方を、
ヘルプサイドを守るディフェンスといいます。

内心の定義

ところで、選手はいちいち
△ABGの内心を意識して守る
というわけにはいきませんね。

b-fig05.png

実際、指導をする場合は、図5のように、
bはAを見て、ABとAGのラインの両方を
同等に気を配るということと、
一方で、Bを見て、ABとBGのラインの
両方に気をつけて守っていれば、
よいポジショニングとなります。

ということは、知らず知らずのうちに、
∠Aと∠Bの二等分線上に立つということになります。

ここで、三角形の
角の二等分線の交点が内心であることが、
何と、バスケットのディフェンスによって
説明されたわけです。

内心も重心

バスケットのディフェンスという観点から
内心を考えた場合、
三角形の各頂点に重みを分布させた状態での
釣合いの点、つまり重心と考えることもできます。

b-fig06.png

例えば、図6のように辺の長さが
g>b>a
という場合を考えてみましょう。

このとき、その辺に対応した頂点G,B,Aが
Bのディフェンスの守りの優先順位となります。

b-fig07.png

また、図7のようにA,BがGから遠い位置の時、
たとえGがゴールであっても、
b>a>g
なので、B,AがBのディフェンスの
守りの優先ポイントです。

つまり、Bを守るディフェンスをIとしたとき、
Iの守る位置(内心)は、
実は各頂点に異なる重みがかかっている状態での
釣合いの点と見ることができるのです。

具体的に数学の問題に移して考えてみましょう。

b-fig08.png

今、△ABCが図8のようなとき、
各辺の長さに対応して、
質点の重みが決定するとします。

この場合は、Aに3、Bに2、Cに4が対応します。

このように重さが分布している、
偏った三角形の質点重心を内心と考えるのです。

つまり、Aにボールがあるとき、BのDFのbは、

「BよりもCやAに注意を向けるべき」と考え、
A,Cに寄った点で守ることになります。

これは自然な考えですね。

ヘルプサイドを守るディフェンスは、
ボールマンとマークマンとゴールの重要度(重み)を
瞬時に判断して、重みが大きい方に
シフトすることが意識されれば、
一流のディフェンスと言えるのかもしれません。

では、図8のときの
釣合いの点の位置を決定しましょう。

まず、線分ABを2:3に内分する点に
ABの重心があるので、その点をDとします。

ここで、DとCを結んだ線分を考えると、
Dには2+3=5の重みがかかっているので、
CDを5:4に内分する点が釣合いの点です。

b-fig09.png


図のようなフレーム三角形において、
この点を指で支えると釣り合います。

この点が内心というわけです。

上で示された位置ベクトルの式  

b-fig10.png

を変形すると、  

b-fig11.png

となります。


この式はモーメントを表していることがわかります。

おわりに

ここで述べたバスケットと内心の話は、
あくまで一つの標準的な考え方です。

このセオリーを踏まえて、
様々なバリエーションを
チームとして考えることができます。

例えば、ボールマンのドリブル突破能力が弱ければ、
ヘルプサイドを守らず、
完全に1対1の形にすることもあるでしょう。

また、ボールマンに対するディフェンスを
オーバーシフト
(一方向に強制的に向かわせるような守り)
することで、動きを誘導して、
1:2の状態(ダブルチーム)をつくって挟み込む
というピンチプレイを仕掛ける戦術も考えられます。

私は、20年以上前に、
大野高校でバスケットの顧問をしていた時に、
ゾーンディフェンスとマンツーマンディフェンスを
コンビネーションしてトラップを仕掛ける
独特なディフェンスを考えて、
それをチームの武器にしていたことがありました。

選手が5人しかいないようなチームでしたが、
とびきり素直な子ども達が
私の指導についてきてくれて、
県のベスト8に入ることができたのは
私のかけがえのない思い出です。


 

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2017/ 03/ 30( 木) 18: 39: 37| | # [ 編集 ]
 

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