「K君との数学談議・全微分可能とは」

もう十数年も前の話しですが、
T大学をAO入試で合格したK君との
数学談議シリーズを
備忘録としてブログに書いています。

1回目はヤコビアンについてでした。

実は、彼が、最初に私にした質問は
「全微分」についてでした。

そこで、今回は、その様子を
対話形式でまとめたいと思います。


K:先生。全微分可能の定義なんですが、
  次のような記述がありました。

zb-01.png

  この中の、

 zb-02.png

  の意味がイメージしにくいのですが。

T:じゃあ一緒に考えてみよう。

  まず、高校では1変数の関数だけを
  あつかってきましたが、
  大学では2変数以上の関数も扱います。

  高校では、y=f(x)、つまり、独立変数が x で、
  それに対応して y が決まるという関数をならいます。   

  それが、2変数では、z=f(x , y)という形、
  つまり独立変数 x , yに対応して、
  z が決定するということです。

zb-03.png

K:図形的には、y=f(x) は
  xy平面上の曲線を表すのに対して、
  z=f(x , y) は、xyz 空間上のある曲面を
  表す式と考えるのですね。

T:そう。次元が1つ上がるのです。
  平面→空間で整理してみると
  
  ● y=f(x) → z=f(x , y)
  ● 平面上の曲線の方程式 → 空間上曲面の方程式
  ● 微小部分は直線で近似 → 微小部分は平面で近似
  ● x軸と曲線で囲まれた面積を考える → 
     xy平面と曲面で囲まれた体積を考える

  という対応です。

  レベルがワンランク上がるのですが、
  平面で行なった考えがそのまま保存されます。

  つまり、きちんと平面上での考えが理解されていれば、
  3次元でも難しいことはないと思います。

  では、まず1変数から復習してみましょう。

   y=f(x) が x=a で微分可能とはどういうことでした?

K:
  zb-04.png

  が有限確定値を持つということです。

T:そうですね。ここで、f’(a) の図形的意味は?

K:x=aにおける接線の傾きです。

T:そうです。では、図を見てください。

  zb-05.png

  まず、Q1Q3 の長さは、f(a+h)-f(a)

   また、Q1Q2=h tanθ で、
  tanθは接線の傾きですから、tanθ=f'(a)です。

  つまり、Q1Q2=h f’(a) ですね。

  さて、ここで、Q1Q3=Q1Q2+Q2Q3 なので、

  Q2Q3=εとすると、
 
  zb-06.png

  が成り立ちます。

  両辺を hで割れば、

  zb-07.png

  つまり、

 zb-04.png

  が成り立つということは、
   h→0 としたとき、ε/h が0に行く
  ということが微分可能の図形的解釈です。

K:なるほど。つまり、Q0をP0に近づけるとき、
  それよりずっと急速にQ3はQ2に近づくということですね。

T:そうです。それはイメージ的にいうと、
  「Pにおいて微分可能とは Pの近傍を直線(接線PQ2)に
  見立てることができる」ということになります。

  このことを「まるい地球もすむときゃ平ら」の原理
  といった人がいます(小沢健一先生)。

  面白いですね。

  このことを踏まえて、最初の式を考えてみると
  イメージしやすいでしょう。

K:なるほど。

  zb-02.png

  の意味が見えてきました。

  つまり、平面の場合は、Q0 をP0
  x軸上の直線に沿って近づけていくのに対して、
   3次元の場合は、図のように
  対角線に沿って近づけていくカンジですね。

zb-08.png


T:そうです。そのとき、誤差の項 ε(p , q) が
  Q0P0よりも急速に0に近づく。
  つまり、その点の近傍で平面に
  見立てることができるというわけです。

T:2変数関数での微分可能性では接線ではなく、
  接平面が登場します。

  ところが、高校では残念なことに
  平面の方程式はやっておりませんので、
  まずは、最初に平面の方程式の説明から
  していきたいと思います。

【平面の方程式】

T:まず、直線の方程式の復習から入りましょう。  
 
  zb-09.png
 
  を考えてみましょう。

K:直線上の任意の点をPとして、ベクトル方程式でかけば、
  
  zb-10.png

T:そうですね。このようにベクトルを使えば、
  空間における直線の方程式も同様に
  求めることができますね。

  ではもう一つ。今度は、

  zb-11.png

  を考えてみましょう。

K:内積=0ですね。直線上の任意の点をPとすると、

  zb-12.png

  ですね。 成分表示すると、

  zb-14.png

  となります。

T:では、いよいよ平面の方程式を求めます。
  今2通りの方法で直線の方程式を求めましたが、
  そのどちらかの考えを利用します。

K:例えば、

  zb-15.png
 
  考えれば… ええと。これはだめですね。

  平面がただ一つに決まりません。

zb-16.png

T:そうですね。では後の方の方法ではどうなりますか?

K:

 zb-17.png

  ですね。あっこれはただ一つに決まります。

  そうか。こうやって平面の方程式を求めるんですね。

  zb-18.png


  求めると、

  zb-19.png


T:これを、

  zb-20.png

  といいます。   

  一般に、この式のカッコをはずすと、

  zb-21.png

  とかけます。 これが平面の方程式の一般形です。

   さあ、これで準備完了。

  いよいよ全微分可能についての説明に入りましょう。

  あっそうだ。その前に偏微分は大丈夫ですか。

K:大丈夫です。x , yで表された関数に対して、
  微分する1つの文字以外をすべて
  定数と見るという方法ですね。

  例えば

  zb-22.png

  なら、x で偏微分すると、

  zb-23.png


  また、yで偏微分すると、

  zb-24.png

  ですね。

  zb-25.png

  と書くのでした。

T:偏微分の図形的な意味はどうですか?

K:例えば、y を定数に見るということは、
  ある曲面に対して、xz平面に平行な平面で
  切ったときにできる曲線の接線というイメージです。

T:では偏微分のイメージ図を描いてみます。

 zb-26.png

  図のような
  z=f(x , y)で表される曲面があったとします.

  このとき、xで偏微分するということは、
  y を定数と見るということです。

  それは、図のように、xz平面と平行な平面で切って、
  その切り口に表された曲線を
  微分したということになります。

  例えば、図のように y=2とすれば、図の太線の関数は、

   z=f(x , 2) という、

  xz 平面上の2変数関数になるわけですね。

  ですから、図において、fx(1 , 2)というのは、
  曲線z=f(x , 2) の、点 Pにおける接線の傾きというわけです。

  ではいよいよ、最初にあげた問題、
  全微分可能性について説明します。

zb-27.png

  この図が命です。

  P(p, q , f(p , q))において
  全微分可能とはどういうことでしょうか。

  P における接平面 PQ1R1S1の方程式を
  次の手順で求めます。

  まず、直線PQ1の方程式は、
  曲面を平面PP0Q0Qで
  切った曲線PQ2のPにおける接線の方程式なので、

  zb-28.png

  とおけます。

  また、直線PS1の方程式は、曲面を
  平面PP0S0Sで切った
  曲線PS2のPにおける接線の方程式なので、

  zb-29.png

  さて、ここで、平面PQ1R1S1の方程式を、

  zb-30.png

  とおくと

  zb-31.png

  と求まりました。
  
  この式において、x=p+h , q=q+kとすると、    

  zb-32.png

  となります。 z=f(x , y)なので、    
  
  zb-33.png

K:長かったけれど、
  ついに、最初の式にたどり着きましたね。

T:全微分可能の定義の式をもう一度書くと、

  zb-01.png


  ここで左辺はRR2
  右辺では、
  
  zb-34.png

  であることに注意して下さい。

K:そして、

  zb-35.png

  ですね。 そうか。わかりました。

  R0をP0に限りなく近づけるとき、
  その距離よりもずっと早く、R1R2が0に近づく。

  そして

  zb-02.png

  となるとき全微分可能という。  

  つまり点Pの近傍での曲面を
  接平面にみなすことができるというのが
  全微分可能ということなんですね。

  1変数で考えたことの自然な拡張になっていますね。

T:そうですね。「丸い地球も住むときゃ平ら」
  が更に実感できますね。
  上で述べた全微分可能性から、    

  zb-36.png

  となり、これを動的に考えて規則化して

  zb-37.png

   という全微分が得られます。

K:1変数関数の、dy=f'(x) dx と対応していますね。




 

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