やこびあ~ん

先日、かつての勤務校の教え子と
ばったり会いました。

彼は、大学1年次に解析の重積分に登場する
ヤコビアンの意味がわからなくて
挫折しそうになったという話しをしていました。

ヤコビアン(関数行列式)とは、
多変数関数の積分の変数変換を行なうときの
通行手形みたいなものです。

私は、彼のその話を聞いて、
思い出したことがありました。

もう10年以上も前の話しですが、
AO入試で、某大学に合格し、
大学初年級の数学を一人で学びはじめた
K君という生徒がいました。

彼から、次の定理1の
J(ヤコビアン)の意味がわからない
という質問を受けたことがあります。

定理1
fig-01.png


私は、ヤコビアンを説明することで、
高校で学んでいる1変数関数における
置換積分の意味の深い理解に
到達できるのではないかと思いました。

そして、大学数学を展望するような
学びに繋がるかもしれないと考え、
K君と一緒に勉強しながら2人で対話をしました。

以下にそのときの内容を記したいと思います。

ちょっと長くなりますよ。

【1変数関数の置換積分】

T:まず、1変数関数の置換積分からはじめてみましょう。
 例えば
 
 fig-03.png

 を置換積分してみましょう。 

K:えっこれをですか。t=3x とするんですよね。
  まず、積分範囲が変わります

  fig-04.png

  次に、t=3xから、dt=3dx なので、

  fig-05.png

 となります。

T:ではここで、この式を1行ずつ分析してみましょう。
 まず、最初の t=3x は、
 xの世界からtの世界への写像を表しています。   
 図に描くとこんなカンジです。

 fig-10.png


 これは、先ほどの定理1では、

 fign-05.png

 にあたります。

 そして、上のグラフでもわかるように
 x の1つ1つに対して、t=3x (xを3倍する)
 という規則(写像)は1対1対応になっていますね。  

 すると、次の行の

 fig-04.png
 
 は、0≦x≦1 という領域が(xを3倍する)
 という規則(写像)によって、
 0≦t≦3 に移っていることを示しています。

  ここまでの話が、【定理1】の

 fig-07.png

 にあたります。

K:なるほど。ということは、
 
 fig-08.png

 の部分が、定理1の

 fig-09.png

 にあたっているわけですね。

T:そうです。つまり、

 fig-08.png

 の1/3にあたるのが、|J|というわけです。   
 
 先ほどのグラフを見ると、 x の分割を等分割としたとき、
 t の分割はその3倍になっています。

 つまり、dt=3 dx というのは、
 2つの世界における分割を
 バトンタッチする式なんですね。

 では、そういうことを踏まえて、
 今度は2変数関数の積分の話に
 進んでいきたいと思います。

【重積分と体積】

T:1変数関数の場合は、y=f(x) は
 平面上の曲線を表すので
 (yが非負の場合は)グラフとx軸で囲まれる面積
 と考えることができるわけですが、
 2変数関数の場合は、z=f(x,y) は
 空間上の曲面を表しますので
 (zが非負の場合)曲面とxy平面上の
 体積とみることができます。
 
 fig-11.png

 図において、有界閉領域Dの上にある
 曲面z=f(x,y)との体積は、重積分を用いて、

 fig-12.png

 と表します。 体積を求める原理は、
 次の図のように、D内を格子状に分割して、
 その上に高さが z=f(x,y)の柱を立てて、
 その微小直方体の体積を
 足し合わせていくということです。

fig-13.png
 式のイメージは次の通りです。

fig-14.png


K:実際の計算では、累次積分にするのですね。

T:そうです。つまり、まずx方向に足し合わせて、
 x軸に平行な面を作って、それを y方向に1歩ずつ
 じりじりと進めて加えていくか、
 またはその逆に考えるかです。
 
 ベーシックのプログラムでイメージするとこんなカンジです。

 for y=y1 to y2
  for x=x1 to x2
  S=S+f(x,y)
  next x
  next y

 さて、考えている底面の領域Dは、
 細かく等分割化されています。                 
 
 fig-15.png

 この領域Dは変数変換 
 x=x(u,v) y=y(u,v)によって
 どんな分割の領域に移るでしょうか。

 上の図の細かい長方形を作っている
 それぞれの直線が変数変換によって
 ある曲線に変わりますから、
 それらの曲線で囲まれた細かな図形が
 新しい底面になるはずです。   

 では、具体的にやってみます。
 まずuを、u1,u2,u3
 というように細かく分割します。
 ここで、

 △u=uk+1-uk

 と見るのです。

 そして、各ukを固定したときの曲線(x,y)を描いていきます。   
 例えば、u=u1としたとき、
 x=x(u1,v), y=y(u1,v)
 を満たす曲線が下図のようだったとしましょう。

 fig-16.png


 次に今度はu=u2と固定して、
 同様の曲線を図示します。                
 これを続けていくと、下図のような縞模様が
 できあがっていきます。

 fig-17.png

K:なるほど。ということは、今度はvについても同様に、
 v1,v2,v3,…
 として曲線を作っていくんですね。

T:そうです。そうして新しく「ゆがんだ格子」
 で作られた領域D'が得られるわけです。
 例えば、下図のような曲線に移ったとします。

 fig-18.png

 こうしてできた新しいゆがんだ格子と、
 もとのxy平面上の格子が対応しているわけです。                

K:そこで、2つの格子の面積の比較が
 問題になるわけですね。

T:その通りです。1変数の場合は、
 単に軸上の分割の対応でしたが、
 2変数の場合はこのように、
 格子とゆがんだ格子との面積の対応になるわけです。     


【ヤコビアン】

T:では、ヤコビアンの説明に入ります。

 図のように、新しいゆがんだ格子ができたとします。

 fig-19.png

 このとき、分割をどんどん細かくしていくと、
 図形PQRSは、ほとんど、ベクトルPQ、ベクトルPSで
 つくられる平行四辺形の面積と
 変わりなくなるというのがポイントです。

 ではまず、図形PQRSの面積を考えてみます。

 fign-01.png

 なので、

 fig-22.png

 ここで、ベクトルPQ、ベクトルPSで張られる
 平行四辺形の面積ですが
 どう考えればよかったですか。

K:一般に、
 
 fign-02.png
 で張られる平行四辺形の面積は、
 次のような図形の変形で考えることができます。

fig-20.png

T:そうですね。ただし、これは符号付面積なので、
  面積は
 
  fig-21.png

 となりますね。
 そうすると、□PQRSの(符号付)面積は、

 fig-23.png

 ここで、
 
 fign-03.png
  
 は、v を固定したときの、xの増分ですから
 分割を0に近づけると、

 fign-04.png

 とおけます。これがポイント。

K:ええと、図に描くとこんなカンジですね。

  fig-26.png

T:いよいよフィニッシュです。
  
 fig-27.png

  とそれぞれおけますから、
 □PQRSの(符号付)面積は、

 fig-28.png

ここで、一般に、行列式において、

 fig-29.png

 が成り立つので、

 fig-30.png

 これを領域D'内全体で動的に考えた式が、    

 fig-31.png

 となるわけです。

K:ついにヤコビアンが登場しましたね。
  
  fig-02.png

 とおけば、 変数変換した式を
 体積としてイメージすると

 fig-32.png

  というように変換されたことがわかりました!

T:K: やこびあ~ん



 

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