数学の情緒

最近、朝のウォーキングを行っています。
ここ数日は、足の調子が良く、
ジョギングできるようになりました。

今日は、日曜日だったので、
少しゆっくり起き、いつものコースを走りました。
すると、家から数百メートルのところにある
リンゴ畑がとてもきれいで、心が洗われました。

リンゴ畑01

リンゴ畑02


これまでは、薄暗い早朝にウォーキングを
していたからかもしれませんが、
こんなに近くに、こんなにきれいに
リンゴが実っているなんて気づきませんでした。


でもね。

近所のリンゴで感動したなんていうと
カミさんに怒られそうです。

だったらもっと、自分の家の周りや家族を見なさいと。

いやあ、全くその通りですね。
そんなことを思いながら、家に戻ると、
我が家の庭にもバラがまだ咲いていることに気づきました。

リンゴ畑03


そうしたら、カミさんにちゃんと感謝しないとなあ
という気持ちにもなりました。

一番感謝しなければならない人ですからね。



さて、

私はこのリンゴを見ながら、、
なぜか数学の情緒について考えていました。

「緒」とは端緒などと用いるように、
「いとぐち」「きっかけ」を表す言葉です。

「情」とは、感情や心の変化を表すもの。かな。

リンゴがどんなにきれいに実っていても、
それに気づく人と、気づかずに
通り過ぎていく人がいます。

あるいは、リンゴの実の存在に気づいても、
心が動かない人もいるでしょう。

私は、そのリンゴの実の価値は、
リンゴ自身にあるのではなく、
それを見た人の「気づき」によって
生みだされていくと考えたいと思います。

リンゴが緒で、そこで情が動き出す。

私はよく、
学びとは「築く」のではなく「気づく」こと、
などと言っています。

それは、学びとは、ある事物や現象を眺め、
そこに潜んでいるものを見つけ出す行為というより、
それらの事象をいとぐち(緒)にして、
自分の思考が動き出し、
自分の内部にあるものを掴み取ることが
「気づき」「学び」ではないかと思うのです。

そのような見方をすると、
数学とは、自然や、宇宙や、図形や、
数や言葉や式などあらゆるものに心を寄せ、
それらと一体化し、心が動きだすことであり、

それによって、
自分の中にある「何か」を呼び起こし
そしてつなげていくこと、
とも言えるのかもしれません。

これがまさに数学の情緒ということなのだろう、と。



先日、京都で数学研究会に呼ばれたとき、
この数学の情緒についての話しをしました。

その時例にあげたのが、
2年前、盛岡三高に勤務していたときの
3年生のDさんの話でした。

Dさんは、SSHクラスで数学研究のグループに所属し、
合同変換群の研究をしていました。

彼女たちの研究は、東北SSH発表会で
見事優秀賞を受賞します。

その一方、Dさんの部活動は文芸部でした。
この年、彼女が書いた
「細工ロイドの通り道」という小説が、
何と全国1位の文部科学大臣賞に輝きました。

(なぜ、このタイトルなのかは、
こちらをご覧いただくとわかります。)→★★★


さて、Dさんの文部科学大臣賞受賞に向けての
挨拶文に私は心を打たれました。

そこから一部抜粋します
(ポイントの部分を赤字にしています)。

<前略>
この度、最優秀賞を頂いた「細工ロイドの通り道」は
理系少女たちの物語になっています。

作中で紹介されているサイクロイド曲線は、
きっと文系の方々には馴染みのないもので、
理系の私だからこそ書けた小説なのでしょう。

文芸部での活動と理系という進路とは
私の中で当初交わらないものでした。

しかし、2年と半年という文芸部での活動を通して、
その考えは変わりました。

文芸作品とは、自然法則のようなものだと思うのです。
この世界に存在している自然法則を
解明しようという理学の姿勢は、
筆者が書き出した世界を紐解く読者の姿勢と
同じもののように感じるのです。

自然法則も、文芸作品も確かに存在しているものの、
私たちが気に留めなければ何の意味も示せません。
表面を眺めてみても、少し理解できた気になるだけで、
その本質は見えてこないのです。
しかし、真剣に向き合ってみれば、
そこにはヒントが散りばめられていて、
それを手がかりに世界を自分のものへと
引き寄せることができます。


この物語にもそんな世界の一端が
見えていれば嬉しいです。
(以下省略)


この文の赤文字の部分が、
まさに数学の情緒なのではないでしょうか。

美しいリンゴ畑を見たとき、私は実は
Dさんのこの言葉を思い出していました。



 

コメント

コメントの投稿

  • URL
  • コメント内容
  • password
  • 秘密
  • 管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURL: http://simomath.blog.fc2.com/tb.php/1323-2f2ce399