「1/f ゆらぎ」

昨日の桜雲祭で、
本校が「総合的な学習の時間」で行っている
「自由研究」の代表発表(「総学バトル」)
が行われました。

yuragi16.jpg

「自分の気持ちはどのように作られるか」
について独創的な研究を行ったものや、
将来フリースクールの教師をやりたい
という思いを持ち、
その実現の可能性を求めた研究など、
印象に残る面白い発表がありました。

その中で、M君の「音のクスリ」という発表は、
音楽に「1/fゆらぎ」を入れることで、
心理的な効果を高めるというもので、
興味がそそられました。

yuragi15.jpg


この発表を聴いて、
私が以前本校に勤務していた時に、
AO入試に向けての指導で、
カズヒサ君という生徒に
1/fゆらぎの話をしたことを思い出しました。

そのときに作った問答形式のプリントを
以下に紹介したいと思います。

あちこち怪しい部分はありますが、
まずは雰囲気だけでも掴んでほしい
という思いから作ったものです。


1 ゆらぎとは

T:今日は、1/fゆらぎについて私の知る範囲で、
 簡単な説明を行いたいと思います。

S:まず、「ゆらぎ」とは何なのですか。

T:そうですね。まず、そこから説明しましょう。
  「ゆらぎ」の研究の第一人者である、
 武者利光先生の言葉によると、
 『ものの予測のできない空間的、時間的変化』
 ということだそうです。

S:それって、でたらめな運動ということですか。

T:いや、「でたらめ」ではないのです。
 「でたらめ」と「規則性」の間の状態という感じですね。   
 例えば、時間と共に変化する数字の列があったとします。
  この列が、
 1,19,100,-3,34,77,-24,100,57,22,4, …
 というものだったら、  
 これはランダム(でたらめ)な列といえそうですが、
 1,3,5,7,9,11,13,15,17,19, …
 という数列だったら、これは第n項が   
 an=2n-1
 という一般項で表される規則正しい列です。   
 このような規則的な数列は、
 項の何番目でもその値を決定することができますね。   

 このような列を「ランダム系」に対し
 「決定系」と呼ぶことにしましょう。   

 さて、では次の数列はどうでしょう。

 1,3,2,3,4,3,2,1,2,3,4,2,3,2,7,6,5,5,2,3,4,5, …

 この数列には全体に適用できるような規則はありませんが、
 ランダムというカンジでもありませんね。
 「前の項に対し±1の変化を基本に、時々大きな変化も起こる」   
 ような数列です。このような数列は
 「ゆらぎ」といっていいのではないでしょうか。   
 このような数列の特徴として、
 現在の状態の直後は予測できるけれど、
 ずっと先はどうなっているかわからないということがあります。

 このような系を「ランダム系」「決定系」に対し、
 「複雑系」と呼ぶことにします。

S:つまり、ゆらぎとは、「規則性」と「意外性」が
 拮抗した状態といっていいのですね。   
 何か具体的なものを示してください。

T:一番よく例に出されるのは、そよ風ですね。
 そよ風は一定の強さではなく、
 強くなったり弱くなったりゆらいでいます。
 それから、小川のせせらぎとか、
 音楽も時間と共に音の高低や大小が変化しているので、
 ゆらぎとみる事もできます。
 人間の心拍数や体温の変化もゆらぎの一つですね。

2 1/fゆらぎとは

S:では、1/fゆらぎとはなんでしょうか。

T:まず、ゆらぎとは時間と共に変化するある量の状態なので、
 これを時間tの関数f(t)と表すことにします。
 このとき、そのゆらぎに関わる要素として
 「強さ(パワー)」と「周期性」に注目してみます。   
 例えば、f(t)が次のようなグラフで表された場合を考えます。

 yuragi01.png
(時間と共に変化する気温)

 この波は、以下の4つのサインカーブ、
 コサインカーブに分解できます。
yuragi02.png
 y=sin2πt

yuragi03.png
 y=-3sin4πt

yuragi04.png
 y=2cos6πt

yuragi05.png
 y=2sin10πt

S:つまり、
 f(x)=sin2πt-3sin4πt+2cos6πt+2sin10πt
 ということなのですね。 どのようにすれば
 このように分解できることがわかるのですか。

T:それにはフーリエ級数の考えを用いますが、
 その説明は後にします。
 ここでおさえて欲しいことは、
 ある区間内で書かれたどんなグラフも
 三角関数の無限和によって
 表すことができるということです。
 この考えはフランスの数学者
 ジョージ・フーリエによって示されました。
 さて、そうすると、先ほどの関数は、
 周期1 , 1/2 , 1/3 , 1/5つまり、
 周波数 1 , 2 , 3 , 5 の関数で表されます。   
 このとき、各周波数に対する波の強度をパワースペクトルといいます。   
 周波数をf、パワースペクトルをPとしたときに、
 P=1/fの関係が成り立つとき、1/fゆらぎというのです。
 つまり、周波数が2倍になると、パワーが半分になる、
 3倍になるとパワーが1/3になる、ということですね。

S:なんとなくわかったような気がするのですが、
 パワースペクトルというのはどのようにして求めるのでしょう。

T:例えば、波の強さとして、「振幅」を考えることができますね。
 上の例では、波の強さは順に1,3,2,2と考えることができます。   
 ただ、これはパワースペクトルとは少し違います。
 これも後でフーリエ級数のところで話しましょう。

S:少し難しいので、もっと簡単な例で説明してくれませんか。

T:そうですね。では、少し乱暴になるかもしれませんが、
 先日カズヒサ君と話したときの方法で説明しましょう。

3 1/fゆらぎの超アバウトな説明

T:ええと。では、バスケットボールの話しをしたいと思います。
 今、A君が、バスケットボールのフリースローを何度も行ったとします。
 入ったときを○、はずしたときを×とすると、
 時間と共に変化する1つの系列を作ることができますね。
 これを時系列といいます。   
 例えば、結果が、
 ○○×○×○××○○○×××○××○×○○×○○○○○×○×○××○
 という結果だったとします。
 これのゆらぎを調べてみます。
 まず、周期を無理やり導入してみましょう。
 ○○○…と、ずっと○が続くのを周期1とします。   
 また、○×○×…と、1回おきに○が起こるものを周期2とします。
 次に、○××○…と2回おきに○が起こるものを周期3としましょう。

 このように「周期」を定義すると、上の結果から、
 各周期ごとにその回数はどうなるでしょう。

S:つまり、周期1は、○○という状態が
 何回起きているか調べればよいのですね。      

 yuragi06.png

 上の表のようになりました。

T:ここで、周期sと出現回数Pをグラフに表すとどのようになりますか。

S:図の様になります(実際はx軸y軸は、s軸P軸となる)。
 yuragi07.png

 なるほど、P=1/sのグラフになっているので、
 これが1/fゆらぎということですね。

T:先ほどあなたが作った表が、
 いわゆる、周波数ごとの波の強さを
 スペクトル分解して分析したということになります。   
 そして、スペクトルの強さはここでは、
 「出現回数」ということにしましたが、
 一般にはパワースペクトル密度とよばれるものを
 計算することになるのです。

S:なるほど。そして、そのグラフを見ると、
 シュートをした人の特性がわかるのですね。

T:例えば、光は波ですが、太陽の光をプリズムを通すと、
 赤橙黄緑青藍紫の7色に分かれますね。
 光の色は波長(周波数)に対応するので、
 プリズムで投影された色の幅の太さが
 その波長の強さを表しています。
 太陽光の場合だと、色の幅が均等になりますね。

 このようにスペクトルを分析することで、
 様々な性質を知ることができるのです。   

 しかし、そよ風や、音などのゆらぎは、
 プリズムを通してスペクトル分析ができないので、
 周波数(振動数)と振幅を調べることで
 パワースペクトル密度を考えようというのです。

4 フーリエ級数

T:では、最後にフーリエ級数の話しをします。   
 先ほど少し話をしましたが、ある区間内で描かれた
 任意の(有界な)関数f(x)は、
 必ず三角関数を用いて表すことができます。    
 具体的には、
 yuragi08.png
 とあらわせます。   
 関数として式で表されなくても、
 例えば下図のような手書きの任意の図形だって、   
 三角関数で表されるのです。
 yuragi09.png
 さて、私達は、上のようなゆらぎのグラフから、
 どの周期の三角関数が、どれだけの強さで
 入っているかということが知りたいわけです。   
 ということは、f(x)内における、すべてのnに対しての
 sin nxとcos nx の係数を求める必要がでてきます。    

 ところで、ここで、とても素晴らしいことに、
 cos nx とsin nxとの係数、an , bnは、
 なんと、次の積分によって表されてしまうのです。

 yuragi10.png

  これをそれぞれフーリエコサイン係数、
  フーリエサイン係数といいます。

S:難しいですね。具体例で示してもらえませんか。

T:例えば、f(x)=3sin2x+2cosxという関数を考えます。   
  今、sin2xの係数である3を求めるには、  

yuragi11.png

 を計算すればよいわけです。   
 実際、

 yuragi12.png

 となり係数3に一致しますね。   
 関数が不明のときも、数値のデータから
 区分求積の手法で積分計算していけば
 係数を決めることができるのです。

S:では、そうやって求めた an , bnから
 パワースペクトル密度はどうやって計算するんでしょうか。

T: 

yuragi13.png

 を計算します。ただし、この値は、ある区間でのものですね。
 ですから、その区間の長さTで割って、

 yuragi14.png

 としておきます。f(x)はその区間をすぎても
 またグラフは続いていますので、
 また次の幅Tの区間で、同じように
 
yuragi14.png

 を計算し、それを平均したものを
 パワースペクトル密度とするのです。   
 この方法ではかなり時間がかかるので、
 実際はFFT(高速フーリエ変換)という手法で
 それぞれの周波数に対する
 パワースペクトル密度を求めていきます。


 

コメント

コメントの投稿

  • URL
  • コメント内容
  • password
  • 秘密
  • 管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURL: http://simomath.blog.fc2.com/tb.php/1275-2b36a2cc