グループワークについて⑤「グランドルール」

グループワークについての記事、
随分間をおいてしまいました。

前回は、アイスブレイクについてまとめました。

今回は最終回として、
グループワークにおけるグランドルールについて、
これまで多くの方々からいただいた
ご意見を紹介しながら、まとめたいと思います。

少し長くなると思います。


私は、ある中学校に行った時、
グループ活動のルールとして、
次のような標語が教室に掲げられているのを見ました。

<聞く>
●前に出た人やペア活動の相手の目を見る、
 うなずきながら聞く等、相手に反応しながら聞く。
<話し合う>
●始めに、話し合いのテーマをしっかり確認し、
 司会者を中心に意見を簡潔にまとめる。
●自分の考えとの共通点や相違点を考える。
●相手の意見や考えを大切にして話し合い、
 自分の考えを深める。
<発表>
●聞く人を意識し、大きな声ではっきりと伝える。
●姿勢を正し、表現力豊かに発表する(目に力をこめる)
●「私は~だと思います(~さんの意見に賛成です)。
 理由は・・・だからです」というように
 理由や根拠を明確にする。


私は中学校の内情はよくわからないので、
これに異を唱えようとは思いません。

まず形から入り、カオスやアナーキーに
ならないように躾けることは
必要なことであると思います。

ただ、このような教師目線的行動様式が目的化すると、
主体性を失ったステレオタイプの対話に
終始してしまうのではないか、

そして、その中で、グループワークの成功とは、
ひたすら教師の目指すゴールに
収斂させていくことになっていくのではないか、
という思いも抱きました。

私は、グランドルールとは、
生徒間の約束事や行動様式のようなものではなく、
なぜ、グループワークを行うのかという、
意義や、必要性、そしてその方法など、
行う側の「思い」を入れていく
ことでもあると考えています。

そして、それは、授業者と生徒、
生徒どうしの信頼をつくるための
基盤づくりでもあると思うのです。

フェイスブック上で、「鬱からエロまで」網羅する(^-^)/
平野貴美枝さんから、
こんなお言葉をいただきました。

「生徒の信頼はグループワークの下地ですね。
お化粧で例えるなら、ファンデーションの部分です。
技法は眉を描いたり口紅を塗ったり。
そのあたりはその人の顔の形とかバランスとか
または流行とかで変わってくるので
個人の采配ですね。」


なるほどファンデーションとは言い得て妙。

さすが、深い洞察力を持ち頭の回転が速い
キミーさんならではの視点ですね。

因みに、私の尊敬するエデュプレナーの
江藤由布さんは、ご自身が進めている
「オーガニックラーニング」を、
学びのオペレーティングシステム(OS)
と表現されていました。

私はこれらの言葉から、グランドルールとは、
対話空間の場を設定するOSと、
授業者のマインドセットを内包するものであり、

「それは学びのファンデーションや~

という思いを抱きました。

さて。

私が出前授業などを行う際に、
掲げているグランドルールは
だいたい次のようなものです。

Ⅰ 自分の意見を主張するだけではなく、
 相手の話を引き出し、共感しあう場にする。
Ⅱ グループ内でいい意見が出た場合、
 それを深め全員が共有する。
Ⅲ 失敗や、間違いを恐れず積極的に話す。
 そして、それが気兼ねなく行える空気をつくる。


上の言葉に込めた思いはそれぞれ
「優しさを持つこと」
「当事者意識を持つこと」
「失敗から学び合うこと」
であります。

そして、これは、学習者に要求するルールだけではなく、
授業を行うものこそが持たなけれなならない
マインドでもあると思います。

上に述べたことを、授業者の視点でまとめると。

Ⅰ 教壇を降りて、学習者の対話をひたすら傾聴する。
Ⅱ 授業者が強引に本時のゴールに誘導しない。


ということでもあると思います。

私が尊敬してやまない、
「反転授業」グループの代表の田原真人さんは、
私のインタビューをしてくださった記事に、
こんなことを書かれています。

反転授業の本質は、教師が教室で権威にならずに、
主体的な学習の支援に回ることにあると思います。
教師が権威になると、生徒が自分で考えるのを止めて、
教師から答を求めるようになるからです。

「反転授業の研究」は、教室と相似形の
フラクタル構造を持つグループです。
グループの中に権威を作らず、
全員の関係をオープンでフラットにすることで、
誰もがリーダーシップをとって
主体的に振る舞えるようにしていくということを目指し、
グランドルールを設定しています。

しかし、このようなフラットな関係は、
ヒエラルキー型の社会システムに慣れた人、
ヒエラルキーを登った人にとっては、
必ずしも居心地の良いものとは限りません。
全員が力を発揮できるペイフォワードの関係性を
作っていこうというビジョンを共有し、
それを体現できたことに喜びを感じる
マインドセットを持っている人だけが、
フラットな関係に居心地の良さを
感じるのではないかと思います。



そういう意味でも、グランドルールは、
グループワークが成功するかどうかの
鍵を握っているのではないかと思います。


ところで、私は、上で述べたⅠⅡⅢのように
グランドルールをまとめてみたのですが、
何かどうもすっきりしませんでした。

それは、確かに教室という空間を
安全・安心な場にするという思いは見えるけれど、
肝心の、子どもたちを「アクティブにする」
という意図がないということに気づいたからです。

結局、私が言っているのは、
モラルやマナーの部分に留まっているのではないか。

だったら、私が暗に批判しようとしていた、
あの中学校のものと大差ないのではないか。

やはり、高校生ならば、
話し合いをどういう方向で深め、
まとめていくかについてのルールも
設定する必要があるのではないか。

でも、それは、マクドナルド型のような、
パターン化された技法を示すことでは、
個々の自由度が失われてしまう。

そんなことを思っていました。


その時、齋藤みずほさんの

「鳥の目、虫の目、魚の目を
研修でのグランドルールにしています」


という言葉が突き刺さりました。

そして膝を36回たたき、
私の目からは鱗が落ちました。

みずほさんは「世界に自慢したい日本女性」で、
その心映えとしての、美しい所作や温かい言葉に
いつも感動ばかりしています。

「鳥の目、虫の目、魚の目」のイメージを
次のようにまとめておきます。

【鳥の目】 
全体を俯瞰して考えること。
今話していることが全体として
どのように繋がっているかを、
高いところから眺め、把握すること。
見通すこと。
一般化すること(インダクティブな推論)。
設計図を描くこと。

【虫の目】
今中心となっている議論を深く掘り下げること。
身の回りにあるものなどを例にあげるなど、
具体的に考えること。
帰納的に推論すること(ディダクティブな推論)。
試行錯誤すること。

【魚の目】
議論の流れを把握すること。
相手の意見に共感、補強する意見を述べること。
あるいは、反駁し、論点を明確にしていくこと。



私は今、この3つの「目」を使い分けながら
グループ討議を活性化させていくことを
考えてみようと思っています。

その他、皆さんからいただいた意見は
傾聴に値するものばかりで
とても勉強になりました。

もっと紹介したいところですが、
ここでは、グランドルールに関連した話題にのみ
焦点を当てて取り上げさせていただきました。

皆さん本当にありがとうございました。


最後に、これまた、私の尊敬する
スーパー教師である松嶋渉さんの言葉をあげて、
このシリーズのまとめとしたいと思います。

生徒の学びにフォーカスする、
それぞれのレディネスが違うことを許容する、
丁寧なインストラクションとリフレクションをする、
話し合いの手順や方法を示す、
場を活性化させる質問を投げかける、
場をコントロールし過ぎない、
などのマインドセットやファシリテーションスキルもなく
グループワークするなんて酷すぎます。



 

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