分数の割り算はなぜひっくり返してかけるのか

「割り算はなぜひっくり返して掛けるのか。」
最近ある方からこの質問をいただきました。

これはもう古くからいろいろな人たちが
語りつくしていると思うので、
もう私なんかが口を挟むことではないのですが、
昔まとめていたことをもとに
以下に記しておこうと思います。

とりあえず

分数01

を例にあげて説明します。

【その1】代数計算の手法で考える

例えば、  

分数01
に対して、
それぞれに 9/2 をかけてやり

分数02

とすれば、後ろが1になるので

分数04

が自動的に得られます。

分数03

つまり9/2の逆元を考えているということですね。

でも、これだと、
「割られる数と割る数に同じものを掛けても商は等しい」
ことを自明として、
操作や法則を用いて説明しているだけなので、
手品を見ている感じで、
意味が落ちてこないような気がします。
私的にはあまり好まない方法です。

【その2】構造的に考える

分数05

相等や同値関係の説明など、
かなりはしょりましたが、
整数環(ユークリッド整域)から
有理数体を構成していく手法です。

まあ数学的ではありますが、
回りくどいですね。

【その3】等分除

分数01

とは、4/3という量を、2/9を単位にして分ける
という意味があります。

例えば、12÷4は、12個の玉を4個ずつ分けると
3人に配ることができますね。

同様に考えて、4/3÷2/9は、
4/3という量を、2/9を単位にして
何回とり分けられるかと考えればよいわけです。

そこで1/9を単位として4/3を構成します。

1/9が3つで1/3なのでそれが4組分なので、
次の図の様になりますね。

分数09

これを2/9でデバイドすればいいので、
例えば次のように6つに分けられることがわかります。

分数10

割られる数が割る数より大きい場合で、
割り切れる形であれば、
手で操作しながら
(等分除としての)割り算がイメージしやすいですね。

ただ、ここから、4/3×9/2と同じ結果になる
といって無理やり納得させるのはちょっと苦しいですね。

そこで、私は次の【その4】のような説明を主に行います。

【その4】量分数・1当たり量

例えば12÷2の商の意味を次のように考えます。
長さ2の土台に面積が12の長方形がのっているとします。

分数11

ここで、その土台を1にしたときの面積が商を表します。
あるいは、これを長方形の縦の辺の長さ、
というように1次元化してもいいでしょう。

いずれ、図の様に分割して、
1当たりの面積が6とわかります。

分数12

この6という1当たりの量が
12÷2の商の意味です。

では、

分数01

で考えてみましょう。

2/9の土台に4/3の面積の長方形が
のっているイメージです。

分数15

これを、次のように分割して土台を1にします。

分数14

分数13

すると1当たりの面積は
最初の4/3の面積を1/2倍して、
それを9つ集めたものなので

分数04

これでひっくり返してかけることの
意味が納得できました。

このような図形的操作を行わなくても、

分数18

ということを理解しておけば、

長方形の底辺がb/aのとき、
それをa/b倍して「正規化」することで
1当たりの量になると
おさえておけばいいわけですね。

分数19

この図は、【その1】で述べた式変形の
意味としてみることもできるでしょう。

ドイツの数学者クライン(1849~1925)は
「分数には『関係』『操作』『量』
という3つの意味がある」と述べ、
分数の指導の難しさを指摘したそうです。

私は、高校生が三角比を
直角三角形の辺の関係から、
単位円によって、
量として再定義していく際につまずくのは、
小学校以来、分割分数(等分除)という
「操作」の呪縛から解放されていない
からではないかと思っています。

例えば、

分数20
といったとき、
この3/4という分数の意味を
どうとらえるでしょうか。

多くの高校生は、サインコサインタンジェントを
次のような図で、
辺の「関係」として捉えていて、
それで思考がストップしているように思います。

分数23

例えば、下図の三角形からtanθ=3/4 
をイメージするのはいいでしょう。

分数24

しかしその逆は成り立ちません。

次の図のように、tanθ=3/4
がいえる三角形は無数にあります。

分数25

そこで、これらの無数の値を代表して、
底辺が1の場合の対辺の長さである
3/4=0.75という
「1当たりの量」として抽出しているわけです。

つまり、「操作」としての分数(分割分数)から
「量」としての分数の見方が必要なのです。

高校の教科書の巻末にあるタンジェントの表は、
1°刻みの角に応じて、
直角三角形の底辺を1にしたときの
高さの値を記述した、
1当たり量のリストなんですね。

余談ですが、昔、高校の数学の
初任者教員10人に
講座をする機会があり、
そのとき、次の図の木の高さhを求める問題を、
どのように生徒に説明をするか
聞いてみたことがあります。

分数22
(三角比の値は教科書の巻末の表を使う)

すると全員が次のように指導するとのことでした、


分数21


これは分数を単に「操作」として見ていて、
1当たり量のイメージがないですね。
頭で考えることを省略して
「代数計算」にパターン化されています。

私が20年前に大野高校に勤めていた
ときのある教え子は、
高校卒業後すぐ大工になったのですが、

彼は、そんな回りくどいことをせず、
33度のタンジェントが0.4663だから
それを25倍すればよいとすぐ考えます。
これが大工さんの知恵。
つまり活用される数学なんだと思います。

1当たりの量を考えることの必然性を理解するために、
私は授業の中で次のような問題を出したりします。

同じキャラメルで、5個入りで70円のものAと、
6個入りで90円のものBがある。
次の問題を考えなさい
(ばら売りでも1個当たりの値段は変わらないとする)。
① Aのキャラメルを23個買ったとき値段はいくらか。
② AとBではどちらが得か。


例えば、①を解くときに、
5:70=23:x
という比例式から代数方程式を作って解くでしょうか。

それより、1個当たりの値段が14円だから、
23個買えば、14円×23と考えるのが自然ですね。

②も1個当たりの値段で比較すると、
Aは14円、Bは15円となり、
Aの方が買い得であることがすぐわかります。


分数指導は国によって相当違うようですが
日本は「操作」「関係」に力点を置いた
リンゴ分数(分割分数)に力点を置いている
といっている人がいます(それは私^^)。

日本の小学生は、
「プールから1/2リットルの水を汲んで来て」
というと
「そんなの無理だよ~」
と仰天する、という話もあります。

分割分数と量分数の混同ですね。

こういう話をすると、
東北のAMIの人たちなど算数大家の人たちから
いろいろご指摘をうけるかもしれませんので
これ以上の深入りはやめておきます。



 

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