神は宇宙という巨大な書物を数学という言葉で書いた

算数パフォーマーの
上野真弓さんという方が、
ご自身の数学講座などで、

「数学は人間が自然を解釈するために
編み出した共通言語です。」


と話している、
というフェイスブックの記事を拝見しました。

素晴らしいですね。


私もこれまでそういうことを
言い続けてきたので、
上野さんは心強い同志です。

たとえまわりが一斉に引いたとしても、
「何言ってるんだぁ? このおばさん(おじさん)」
って顔で見てきても、
めげずに頑張りませうね。^^

すると、上野さんの投稿に、
物理ネット予備校代表で、
反転授業の研究グループを
立ち上げている田原真人さんが、
「なぜ物理法則は数式で書かれているのか」
ということをテーマにした
「科学史/数学」という
ご自身が執筆された
本を紹介されていました。

早速アマゾンで購入しました。

科学史数学

とても面白い!

高校で学ぶ物理は、
ベクトル、三角関数、微積分
といった数学の知識があれば、
公式に溺れることなく
スムーズに学び進むことができます。

恐らくこれは、
多くの物理教師が行う
アプローチではないかと思います。

ところが、田原さんは、そこに進む前に、
先人たちが取り組んできた
人間くさいドラマを提示しています。

私は、これを
「田原流ナラティブ物理」
と命名しようと思います。

彼は、一つの法則が生まれるに至る
歴史的背景を追いかけ、
思考過程を辿り、
つなげ、そして図解して見せます。

この本は、科学史であるとともに、
物事を分析し、統合し、表現するという、
「学び方」の方法論を示すものにもなっています。

さて、冒頭に述べた上野さんの言葉は、
ガリレオ・ガリレイの言葉を
ルーツにするものかと思います。

というわけで、今回は
この言葉の周辺について
まとめてみようと思います。

田原さんの本には、
ガリレイによる近代科学の方法として
次のような記述があります。

ガリレイは、自然を
「数学という文字で書かれている書物」
であると考え、
数学を用いて表される「法則」を捜し始めます。
そして、そのような「法則」を発見することが、
その「書物」を書いた宇宙の創造主の
思考を「理解すること」
ということだと考えたのです。


実は、岩手に、伊藤潤一先生という
数学の巨星がいるのですが、
彼は、「つながる高校数学」の中で、
ガリレイの言葉を次のように
少し詳しく取り上げています。

ガリレオは「偽金鑑定官」の中で語る。
「哲学は、眼のまえにたえず開かれている
この最も巨大な書[すなわち宇宙]のなかに
書かれているのです。
しかし、まずその言語を理解し、
そこに書かれている文字を解読することを
学ばないかぎり、理解できません。
その書は数学の言葉で書かれており、
その文字は三角形、円その他の
幾何学的図形であって、
これらの手段がなければ、人間の力では、
その言葉を理解できないのです。
それなしには、暗い迷宮を
虚しくさまようだけなのです。」


因みに、「ドナルドの算数マジック」
というビデオがあるのですが、
このエンディングに
次のようなナレーションがあります。

「ガリレオが言った通り、
神は宇宙という巨大な書物を
数学という言葉でお書きになった。」


ガリレイ

私は、授業で「ドナルドの算数マジック」の
このシーンをよく取り上げます。

ついでに、映像関係でいうと、
「コンタクト」(カール・セーガン作)の
ワンシーンもなかなかです。

ジョディフォスター扮する女性天文学者
エリーが26光年先の彼方から、
ドド・ドドド・ドドドドド・ドドドドドドドド・・・という、
100以下の素数が続くパルスをキャッチします。

エリーは、これが単なる雑音でなく、
知的生命体からの
メッセージであることを主張します。

しかし、他の学者達は
「高度な文明を持っているなら
なぜ英語をしゃべらん」と訝しがります。
そこでエリーは次のようにいいます。

「英語は高々地球の3割の人間の公用語だけど、
数学は宇宙の公用語よ」
(Math is only true universal language.)


「やまとなでしこ」という
ドラマ(フジテレビ系)は面白かった。

MITで数学を学び、
今は家業の小さな魚屋を営む
中原欧介(堤真一)が、
MIT時代の友人の結婚式で述べる
スピーチは感動です。

「物理学者のリチャードファインマンは
こんなことを言っています。
数学や物理というのは
神様がやっているチェスを横からながめて、
そこにどんなルールがあるのか、
どんな美しい法則があるのか、
探していくことだと。
最初からそんな法則が無いと思うこともできます。
この宇宙で起こっていることはすべてデタラメで、
意味のない出来事の繰り返しばっかりで・・・
だとしたら数学者たちは何もすることが
なくなってしまうんです。
そんな退屈な宇宙に住んでいること自体
嫌気がさしてしまう。」


以下、本題に進むのですが、
ここまでにしておきます。


この「やまとなでしこ」は
毎回数学のちょっとした話題が散りばめられていて、
数学オタクにはこたえられませんでした。

因みに、この結婚式の参加人数は
68人だったのですが、MITの友人たちが、
ウェディングケーキを68等分する
場面でこんな会話が繰り広げられます。

「68等分か。まてよ、68は17の倍数だ。
ということはガウスが行った
正17角形の作図が応用できるんじゃあないか」
「なるほど。リッチモンドの作図か」


いやあ、たまりませんね。

「数学とは何か」という問の答の一つとして、

「数学とは自然現象を支配する物理法則を
調べる道具である」


と述べることができます。
では、物理法則とは何か。
それは荒っぽく言うと

「最大になろうとしたり
最小になろうとしたりする原理」


のことです。

ネコ

上の写真を見て下さい。
寒い冬、猫がまるで球体のように
丸くなっています。
なぜでしょう。

猫は気温が下がると、
体温をできるだけ放出したくないために、
体の表面積をできるだけ小さくしようとします。

球とは決まった体積を覆う、
最小の表面積を持つ物体だからです。

次の写真は、針金で作った輪に
石鹸幕を張ったものです。

P206石鹸膜01LT

輪が中にできるように糸をわたしています。
今、その石鹸幕の内部にある
糸の輪で囲まれた部分を針でつついて、
石鹸幕に穴をあけます。

P206石鹸膜02LT


するときれいな円形の穴があきます。
石鹸幕は、どの部分も、
同等な張力で張られています。

だから輪の中に穴があくと、
外側の膜が引っ張る力によって、内部の輪は、
面積を最大にしようという現象がおきます。

糸の長さが一定なので、
その中で最大の面積を持つ図形が
円というわけです。

言い換えると、同一面積の図形の中で、
周の長さが最も短い図形が円なので、
円に落ち着くといってもいいかもしれません。

まるで猫も石鹸幕も
数学を知っているかのようです。

自然現象とは、でたらめに起こっているものではなく、

「エネルギーが最小の状態で、
安定する方向に推移していく」


という原理が働いていると推察できます。

いわばそれが、ファインマンが述べる
「神様が行っているチェスのルール」
なのでしょうか。

この原理は「変分原理」と呼ばれています。

18世紀中頃、スイスの数学者オイラーは、
極大・極小の性質を用いて
曲線を見出す方法を研究し、
「変分法」と呼ばれる数学の一分野を
築くきっかけを作りました。

この変分原理も、神様が行っている
チェスのルールを解読するために
先人たちが編み出した、
宇宙の共通言語なのかもしれませんね。


 

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