岩手巡回の旅

先日の土曜日に、数学の会合がありました。

その中で、K先生から
とても面白い話を伺いました。

K先生は、ゴールデンウィークに3日かけて、
岩手県内33市町村全部をまわる
家族旅行をしたそうなんですが、
その条件がとても面白いのです。

その条件とは

「全市町村をもれなく1回ずつまわって
自宅に戻る」

「同じ市町村を2度通過してはいけない」


というものだそうです。

自己回避型一筆書き、
つまりジョルダン曲線を描きながら
全市町村をもれなく1回ずつ巡回する
ということですね。

K先生によると、岩手県は巡回可能ですが、
宮城県は不可能なんだそうです。

また、岩手でも地図上では可能ですが、
冬場などは道路通行が不可の地域もあり
不能になることもあるのだそうです。

面白いなあと思って、自分も自宅紫波町から
出発する経路を考えてみました。

iwatejyunkai01.jpg

おまけに4色塗り分けもやってみました。

iwatejyunkai02.jpg


移動時間を最小にする経路を考えるのは
「巡回セールスマン問題」といわれる
数学の有名問題につながります。

このトライアルには、
そんな数学的な要素の他に、
地理、地域の産業や観光など
多くの学びの要素が含まれています。

高校生の自由研究にも面白そうですね。

 

数学初任研

5月10日から12日までの3日間、
本校で数学の初任者研修が行われました。

昨年度、一昨年度は理科の初任者研修を
引き受けていましたが、今年は数学。

7名の初任の先生が3日間本校に通いました。

まずは、2日目に行われた本校の教員による
公開授業から見どころを紹介します。

2学年の三角関数の導入の授業です。



サインのグラフをアナログで導入し、
GeoGbraを活用して説明。

クラスから「1,2,3・・・」の声が
自然発生的に起こるところが良かったですね

次に1年生の濱田先生の授業です。
対称式変形についての授業風景です。



生徒と教師がともに授業を
楽しんでいる様子が
ひしひしと伝わります。
「主体的・対話的で深い学び」
が感じられますね。


私は、初日に1時間程話しをしましたが、
その中から2つほど紹介します。

【史上最低のジグソーパズル】

写真のような、3枚のピースからなる
長方形があります。

ssjp-01LT.jpg

これを並べ替えて
別の平行四辺形を作るという問題です。

生徒にやってもらうと、ほぼ瞬時に、
次の写真のような長方形が出てきます。

ssjp-02LT.jpg

ところが2人の先生にやってもらったのですが
なかなか出てこないのです。

「いやあ、大人になって分別を纏うことで、
もともとあった研ぎすまれた感性が
鈍くなったんですね」

などと冗談を言っていたら、
3人目の人が黒板に駆け寄り、
次のような図形を作ってくれました。

ssjp-03LT.jpg

なるほどそうきたか。

確かに(長方形でない)平行四辺形が
更にもう一つできることが判明。

ssjp-04LT.jpg

こんな他愛のない教具でも、
いろいろ面白い展開が考えられそうですね。

その一つとして三平方の定理を納得する
という話をしました。

ssjp-05LT.jpg

ちなみに、この「史上最低のジグソーパズル」は
小沢健一先生(元東野高校校長)から
教えていただいた教具です。


【3つの球】

数学の活用という文脈の中で、
下の写真のような教材を理科の先生から借りて
持っていきました。

3kyu-01LT.jpg

3kyu-02LT.jpg

これが何の教材かわかる人は誰もいませんでした。

理科の先生にそのことを話したら、
理系では地学をやっていないからではないかとのこと。

そっかあ。

さて、これ、何の教材かわかりますか?

実は、地震の震源地を求める原理を説明する教材です。

ちなみに理科では、
「3球が1点で交わる」
「互いに交わる3つの円の共通弦はただ1点で交わる」
ことは自明で出発しますが、数学の立場で、
なぜそうなのかを考えてみることも提起しました。

3kyu-03LT.jpg


最後に、初日の開講式での挨拶で
私が話したことを記しておきます。

研修は、すればするほどスキルが磨かれ
見識が高まる。っていうのは実は迷信です。

県教委指導主事の前でこんなことを話すと
おこられそうですね(笑)。

「~すべき」「~せよ」など
一方向的に与えられることを受動し、
それが内面化されていくことによって、
むしろ能力が減退することだってあります。

これをtrained ignorance(訓練された無能)といいます。

皆さんには、そういう受動的な学びではなく、
持っている力を遠慮なく発揮し、対話し、
アピールし、発信してください。

若い先生の感性やアイデアは私たちにも
大きな力を与えてくれるはずだと思います。



研修から主体性を引き算すれば何が残るのか。
教育公務員特例法22条の精神の根本には、
教師の主体性の尊重がある、
私は、20代から一貫してそういい続けています。



 

「迷い線による外心と内心の話」

先日、「あなたとバスケと数学と」という記事で、
バスケットのディフェンスと
三角形の内心の話を書いたら、
いろいろな方から感想をいただきました。

ありがとうございました。

そこで、今回はその続編として、
「迷い線」によって三角形の
外心と内心を定義してみようと思います。

尚、ここで紹介する話は、
拙著「つながる高校数学」(べれ出版)
に書いているのですが、

その原点は、共著者でもある
伊藤潤一先生(盛岡白百合学園)の実践を
参考にしたものです。

【2つの水場と迷い線】

草原に2つの水場A,Bがあります。

gosin-01.png

ここに生息する動物たちは、
どちらの水場を選ぶでしょうか。

下の図の直線l(ABの垂直二等分線)の
左側に棲む動物はAを選び、
l の右側にいる動物が、Bを選ぶでしょう。

gosin-02.png

すると、l はその境界線ですね。

境界線上にいる動物は、AかBか迷いますね。

そこで、この l を「迷い線」と呼ぶことにしましょう。

【水場を3つにしたら】

では、水場を1カ所増やして、
3カ所にしてみましょう。

下図を見ると、l はAかBかの迷い線、
mはBかCかの迷い線です。

gosin-04.png

すると、2つの直線の交点Pは、
AかBかCかの迷い点ですね。

このことから、Pを通って、ACと垂直な直線は、
AかCかの迷い線ということになります。

つまり、
「A,Bの迷い線」
「B,Cの迷い線」
「A,Cの迷い線」
は1点で交わり、その交点Pは「A,B,Cの迷い点」
(A,B,Cから等距離の地点)と考えることができます。

このことから三角形の外接円の中心は
各辺の垂直二等分線の交点であることが納得できます。

次に、三角形の内心について考えてみましょう。

【2つの川に挟まれた草原】

a川とb川に挟まれた草原があります。

gosin-03.png

この草原に棲む動物たちは、
水浴びするためにどちらの川を選ぶでしょう。

下図の直線 l (角の二等分線)の上側に棲む動物は
a川が近いのでa川を選ぶでしょうし、

gosin-06.png

l の下側に棲む動物はb川を選ぶでしょう。

l 上にいる動物は、aかbか迷いますね。

そこで、この直線 l を「迷い線」と呼ぶことにしましょう。

【3つの川に囲まれた場合】

今度は、a,b,cの3つの運河で囲まれた草原を考えます。

gosin-07.png


ここに棲む動物たちはどの川を選ぶでしょう。

l は「aかbかの迷い線」、
mは「bかcかの迷い線」ですね。

すると、2直線の交点Pと、
2直線a,cの交わる点を結んだ直線は、
「aかcかの迷い線」と考えられます。

つまり、
「a,bの迷い線」
「b,cの迷い線」
「a,cの迷い線」
は1点で交わり、その交点Pは「a,b,cの迷い点」
(a,b,cから等距離の地点)と考えることができます。

このことから

三角形の内接円の中心は
それぞれの角の二等分線の
交点であることが納得できます。

ちょうど、外接円と内接円の関係が、
「頂点」を「辺」に置き換えたものに
なっていることが面白いですね。

 

「あなたとバスケと数学と」

先日、ある宴席で、
ふとしたことから
バスケットと数学の話しになりました。

三角形の内心と
バスケットボールのディフェンスについての
他愛のない内容なのですが、
子どものように一人めっちゃ熱中して
話してしまいました。

ニコニコと聞いて下さった皆様
ありがとうございます。

今から16年前になりますが、
ある雑誌にその話を書いたことがあります。

以下にその内容を記しておこうかと思います。

インラインの原則

「バスケットボールとはボールを
ゴールに入れるスポーツ」

非常に当たり前ですが、
これをバスケットボールの定義にします。

b-fig01.png

すると、この定義から、図1の様に、
オフェンスAがボールを持っているとき、
次の定理が導かれます。

【定理】
AはゴールGに向かってシュートする。
またはAはゴールGに向かって走り込む。

どちらも線分AG上での動きですね。
このことから、Aに対するディフェンスは、
線分AG上に立ちふさがるように
守らなければいけません。

これを、インラインの原則といいます。

従って、Aが図1のX方向にドリブルで進んでも、
ディフェンスはその動きに
構うことなんかありません。

b-fig02.png

また、図2のようにAが速攻でゴールに向かって
ドリブルしているときは、
その選手を追いかけるのではなく、
早くインラインのポイントに走り込むことが肝要です。

ヘルプサイドディフェンス

では、次にオフェンスとディフェンスを
1人ずつ増やして2対2の状況を考えましょう。

今、Aにボールがあるとします。
すると、「バスケットの定義」によって、
次の定理が得られます。

【定理】
① AがGに向かってシュートする
➁ AがGに向かって走り込む
③ AがBにパスをする
④ BがGに向かって走り込む

上で述べた4つの定理を見ると、
守るべき要点は、
線分AG,AB,BGであることがわかります。

つまり△ABGの3辺ですね。

今、ボールを持っているAに
ディフェンスaがついているとき、
Bに対するディフェンスbは
どの地点で守ればよいでしょう。

b-fig03.png

もし、図3のように、bがBに
ピッタリとくっついて守っている
(ディナイといいます)とすると、
定理の③④は防げますが、
②に対しては甘い防御になります。
(もしAがドリブルでaを抜いたとき、
カバーに行けません)

では、どうすれば3つの要点線分
AG,AB,BGを効率よく守ることができるでしょうか。

ここからが数学の話しになります。

△ABGの各辺に対して平等な位置は、
各辺から等距離となる三角形の内接円の中心、
すなわち内心になります。

b-fig04.png

よって、BのDFであるbは
三角形の内心の地点で
守るということになります(図4)。

これにより、例えばAがaを抜いて
Gに向かっていったならば、bはAを守るために、
AGのインラインに入ります。

また、AからBへのパスのラインは、
パスカットを狙いながら、
もし、Bにパスが入ったら、
bはすぐにBの前に出て、ディフェンスを行い、
今度はaが△ABGの内心の位置をとります。

このような守り方を、
ヘルプサイドを守るディフェンスといいます。

内心の定義

ところで、選手はいちいち
△ABGの内心を意識して守る
というわけにはいきませんね。

b-fig05.png

実際、指導をする場合は、図5のように、
bはAを見て、ABとAGのラインの両方を
同等に気を配るということと、
一方で、Bを見て、ABとBGのラインの
両方に気をつけて守っていれば、
よいポジショニングとなります。

ということは、知らず知らずのうちに、
∠Aと∠Bの二等分線上に立つということになります。

ここで、三角形の
角の二等分線の交点が内心であることが、
何と、バスケットのディフェンスによって
説明されたわけです。

内心も重心

バスケットのディフェンスという観点から
内心を考えた場合、
三角形の各頂点に重みを分布させた状態での
釣合いの点、つまり重心と考えることもできます。

b-fig06.png

例えば、図6のように辺の長さが
g>b>a
という場合を考えてみましょう。

このとき、その辺に対応した頂点G,B,Aが
Bのディフェンスの守りの優先順位となります。

b-fig07.png

また、図7のようにA,BがGから遠い位置の時、
たとえGがゴールであっても、
b>a>g
なので、B,AがBのディフェンスの
守りの優先ポイントです。

つまり、Bを守るディフェンスをIとしたとき、
Iの守る位置(内心)は、
実は各頂点に異なる重みがかかっている状態での
釣合いの点と見ることができるのです。

具体的に数学の問題に移して考えてみましょう。

b-fig08.png

今、△ABCが図8のようなとき、
各辺の長さに対応して、
質点の重みが決定するとします。

この場合は、Aに3、Bに2、Cに4が対応します。

このように重さが分布している、
偏った三角形の質点重心を内心と考えるのです。

つまり、Aにボールがあるとき、BのDFのbは、

「BよりもCやAに注意を向けるべき」と考え、
A,Cに寄った点で守ることになります。

これは自然な考えですね。

ヘルプサイドを守るディフェンスは、
ボールマンとマークマンとゴールの重要度(重み)を
瞬時に判断して、重みが大きい方に
シフトすることが意識されれば、
一流のディフェンスと言えるのかもしれません。

では、図8のときの
釣合いの点の位置を決定しましょう。

まず、線分ABを2:3に内分する点に
ABの重心があるので、その点をDとします。

ここで、DとCを結んだ線分を考えると、
Dには2+3=5の重みがかかっているので、
CDを5:4に内分する点が釣合いの点です。

b-fig09.png


図のようなフレーム三角形において、
この点を指で支えると釣り合います。

この点が内心というわけです。

上で示された位置ベクトルの式  

b-fig10.png

を変形すると、  

b-fig11.png

となります。


この式はモーメントを表していることがわかります。

おわりに

ここで述べたバスケットと内心の話は、
あくまで一つの標準的な考え方です。

このセオリーを踏まえて、
様々なバリエーションを
チームとして考えることができます。

例えば、ボールマンのドリブル突破能力が弱ければ、
ヘルプサイドを守らず、
完全に1対1の形にすることもあるでしょう。

また、ボールマンに対するディフェンスを
オーバーシフト
(一方向に強制的に向かわせるような守り)
することで、動きを誘導して、
1:2の状態(ダブルチーム)をつくって挟み込む
というピンチプレイを仕掛ける戦術も考えられます。

私は、20年以上前に、
大野高校でバスケットの顧問をしていた時に、
ゾーンディフェンスとマンツーマンディフェンスを
コンビネーションしてトラップを仕掛ける
独特なディフェンスを考えて、
それをチームの武器にしていたことがありました。

選手が5人しかいないようなチームでしたが、
とびきり素直な子ども達が
私の指導についてきてくれて、
県のベスト8に入ることができたのは
私のかけがえのない思い出です。


 

「コンプライアンス研修に見つけた確率の問題」

昨日は職場のコンプライアンス研修会を行いました。

副校長先生の発案によるサイコロトーク。

11個のテーマを用意し、サイコロを2個振り、
出た目の和の番号のテーマについて
1分間スピーチをするというルールです。

コンプライアンス研修01

4人一組のグループで楽しく行いました。

コンプライアンス研修02

コンプライアンス研修03


私もあるグループに混ぜてもらいました。

ところで、やっていると、あちこちで、

「交通法規」や「利害関係者との対応」
「クレーム対応」のスピーチが
多いことに気づきだしました。

「薬物乱用」「パワハラセクハラ」が
殆ど出てこないことも。

そりゃあそうだよね。

目の和が7の場合の確率は1/6
目の和が2の場合の確率は1/36
ですからねえ。

数学の初任者のK先生に、
こんな質問をしました。

「サイコロ2個振って目の和で考えると
11のテーマの出現する確率は
二項分布に従ってしまう。
じゃあ、サイコロを2個使って
一様分布にするにはどうすればよいか」

つまりどのテーマが選ばれるのも
同様に確からしくするにはどうすればよいか、
という質問です。

皆さんはどう考えますか?

ちなみに、彼は
瞬時にうまい方法を答えてくれました。

それは、次のような方法です。

Ⅰ 2つのサイコロをA,Bと区別する。
Ⅱ Aのサイコロの目が偶数なら、
  偶数番号のテーマが選ばれる。
  奇数なら奇数番号のテーマが選ばれる。
Ⅲ Bのサイコロの目が、その中の順番とする。


例えば、Aが2で、Bが3なら、
Aは偶数なので、
②④⑥⑧⑩⑫の偶数テーマの方が選ばれます。

そして、Bは3なので、
その中の3番目の⑥が選ばれました。

つまり、②④⑥⑧⑩⑫が選ばれる確率は、
Aが偶数で、かつBがその番号の
順番の目が出ればいいので、
それぞれ(1/2)×(1/6)=1/12 ですね。

③⑤⑦⑨⑪の場合はAが奇数が出て、
Bが1の目なら③が、
Bが2の目なら⑤が決定されるということなので、
それぞれの確率も、
(1/2)×(1/6)=1/12 ですね。

なるほど。うまい!

と一瞬思いましたが、
実はよく考えると疑問が湧きます。

テーマは11個なので、
全部の確率の和が11/12。

1になりませんね。


Aが奇数で、Bが6の目が出た場合、
奇数テーマは5個なので、
対応するテーマがありません。
この場合は
「何も話さなくてもよい」
としてもいいのですが、

必ずトークをすることにすれば
テーマをもう一つ増やして(⑬)
全部で12個にする必要がありますね。


でも、もう少しこの問題を
掘り下げて考えてみましょう。

もし、Aが奇数で、Bが6の目の場合、
対応するものがないから、
「再度最初からやり直す」
というルールを設定しましょう。

これを、次のような確率推移図で考えてみます。

確率推移図

青の矢印で移動する確率は1/2
赤の矢印で移動する確率は1/6です

すると、例えば、テーマ③が選ばれる確率は、
Aが奇数でBが1の目か、
Aが奇数でBが6の目で、
次にまたAが奇数でBが1の目でもいいですね。

そうやって考えていくと、これは、
無限数列で表される確率になりますね。

つまり、

(1/2)×(1/6)
+(1/2)×(1/6)×(1/2)×(1/6)
+(1/2)×(1/6)×(1/2)×(1/6) ×(1/2)×(1/6)
+・・・

初項1/12、公比1/12の等比数列なので、
求める確率は

(1/12)×{1/(1-1/12)}=1/11 

となり、一様になりますね。

めでたしめでたしですね。


この問題は、
A,Bの2人がジャンケンをしたとき、
それぞれが勝利する
確率を求める問題と同じ構造です。

どちらが勝つ確率も同様に確からしいので、
それぞれ1/2と考えてもいいのですが、
細かく考えると
次のような無限級数になります。

1/3+(1/3)(1/3)+(1/3)(1/3)(1/3)+・・・=1/2

つまり、Aが勝つ確率は、
1回目にAが勝つか、
1回めにアイコで、2回目にAが勝つか・・・
と考えるわけですね。


サイコロトークに潜む確率、
とっても面白い。